日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: 3-6
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2014例会:口頭発表
ドイツにおける家政教育
ヘッセン州の初等・中等学校の事例から
*表 真美花輪 由樹小倉 育代
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抄録
目的:国立教育政策研究所「家庭科のカリキュラムの改善に関する研究-諸外国の動向-〈2005年〉」によると、ドイツバーデン・ヴェルテンベルク州では、基礎学校において布地製作(Textiles Werken)、基幹学校において家庭科/被服製作(Hauswirtschaft/ Textiles Werken)が位置づけられてるとの報告がある。それ以前にも、複数のドイツの家政教育・家庭科教育に関する研究が行われており、基礎学校・普通中等学校において「手芸」が位置づけられていることが明らかとなっている。これらの研究は統一以前の西ドイツのものであり、最近の知見に関する報告は殆どない。ドイツの学校制度は複雑であり、我国のように「家庭科」が初等・中等教育において一貫して教えられているという事実はない。また、16ある州により教育制度が異なっている。しかし、手工業、「マイスター」の国であり、「規律」「清潔」を重んじる国民性をもつドイツにおける生活に関する教育の内容・方法に、我国の家庭科教育も学ぶ点があるものと考えられる。そこで本報告では、ヘッセン州において行われている家政教育の実態について、初等教育を中心に明らかにすることを目的とする。
方法:本報告において用いた研究資料は、以下の5つである。①ヘッセン州の学習指導要領、②州指定の「事実教授(Sachunterricht)」教科書、③州内の3校の初等・中等学校における授業参観、学校見学、④同校の教師へのインタビュー調査、⑤州で学んでいる初等・中等学校生、および卒業生へのインタビュー調査。学習指導要領、指定の教科書リストはヘッセン州教育省のウェブページより入手した、Sachunterricht の教科書はインターネットを通じて購入した。2014年9月13日にSchlüchternにおいて初等・中等学校生、卒業生を対象としたインタビュー調査を行った。同15日および18日にHeinrich‐Heine Schule(総合制学校)、16日にWilhelm-Arnoul Schule(基礎学校)、17日にLudwig –Erk Schule(基礎学校)を訪問、授業参観、学校見学、教師へのインタビュー調査を行った。
結果:①ドイツヘッセン州基礎学校における教科として、宗教、国語、事実教授、数学、美術・音楽、体育、外国語、母国語があげられており、独立した家庭科、布地製作の科目は位置付けられていない。 ②美術の内容10項目の1項目として「布地製作」、項目ごとに行う学習テーマの7項目の1つに「食文化」が位置づけられていた。美術の教科書は指定されていなかった。 ③事実教授の内容は、共同生活・社会生活・余暇・労働・技術・空間・時間・自然現象・水・動物・植物・身体の12項目があげられている。共同生活・労働・技術・動物・身体などの枠組みの現象の一部として衣食住生活、家族生活が取り上げられている。 ③教科書は州により指定されており、学校ごとに採用の有無が決められる。採用されれば学校が購入し児童に貸与される。インタビューした基礎学校3年生は教科書を貸与されていたが、訪問した2校の基礎学校では教科書は使わず、教師がワークシートを用意するなどして授業が進められていた。教師は授業準備のために教科書を参考にしており、また、事実教授の教科書を国語の教科書として使用していた(Cornclsen社『LolliPop Sahe』)。 ④例えば、Oldenbourg社の教科書『Frida & Co』の1・2年生用をみると、第2章身体と健康では、まず身体全体のこと、清潔(入浴や歯磨き)から、五感の学習へと続き、最後の「味覚」が食の消費、調理実習、食習慣の学習へと展開している。Wilhelm-Arnoul Schuleでは、野菜や果物の栽培実習、買い物実習、調理実習を通して栄養・食習慣・環境などを学習する充実した食教育が行われていた。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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