日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: A4-3
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第57回大会:口頭発表
生活文化力を培う中学校家庭科授業の創造
*浦上 千歳増田 恭子柴 静子
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抄録
【研究目的と方法】
現行の教育課程では,これまでの「生きる力」の基本理念を引き継いだ上で,「知識基盤社会への対応」,「体験活動の充実」,「日本の伝統と文化の尊重」などが重要なキーワードとされている。これを受けて,平成24年度は,日本の伝統と文化を「柿渋染め」という染色を通して学ばせる授業づくりを行い,衣生活学習のもつ教育的意義を再確認した。 昨今,日本の伝統や文化の視点を取り入れた衣生活の学習は,「浴衣の着付け」として取り上げられている。広島の周辺の中学校を見てもそのようであるが,現実問題として,浴衣の準備,外部講師など金銭的負担も生じることなどから,「日本の伝統・文化」の学習は必要であると思いつつも,どの学校も苦悩しているのが現状である。 衣生活の学習には,(1)衣に関する科学を学び,科学的な思考方法を身につけて日常生活を合理的なものに改善することができる,(2)針と糸と布を使ったものづくりの体験により,手指の巧緻性が高まるとともに,ものを創造することの楽しさを味わい,また忍耐の必要性を実感して,精神を豊かに育むことができる,(3)日本が世界に誇るべき布や衣服・衣装の学習を通してこれらに対する敬意が芽生え,伝統文化を継承発展させようとする気持が生まれて,これが日本人としてのアイデンティティに結びつく,という教育的価値が備わっている。これらを総合した力を衣生活文化力と定義したい。そして,とりわけ(3)については,(ア)「自分の身近な地域や自国の伝統・文化の価値を理解し,誇りに思える」,(イ)「自国の伝統や文化を世界に発信できる資質や能力をもっている」,(ウ)「他国の伝統や文化を理解し尊重するとともに,互いに文化交流ができる」という三層に渡るものと考えたい。この三層に関していえば,平成24年度の授業実践において生徒が達成したのは主に(ア)であり,(イ)と(ウ)については研究課題として残された。これを受けて本年度は,幕末の美しい着物からジャパン・ブルーの色を発見することに始まり,タイの高地に住み「針と糸の民」といわれているモン族の子どもたちに,手作り絵本とそれが入る藍染めデニムのバッグを贈るという企画を通して,生徒に(イ)と(ウ)を達成させるための授業をデザインし,アンケート等により学習効果を検証することにした。
【結果】 
1.幕末に作られた,絹地の豪華で美しい“きもの”の実物に触れさせ,染色や刺繍の高度な技を実感させたこと,そして,外国人から見た日本の文化を紹介するという視点を取り入れて授業を行ったことで,きものは古いもの,儀式的な衣服である,といった生徒の通常の意識が変化した。立派な衣装を生んだ先人に対して敬意を払い,日本人としての誇りを芽生えさせることになった。
2.日本における藍の歴史的な事項の学習と,世界各地で生活の中に存在してきた藍の学習,すなわち時間的つながりの縦軸と空間的広がりの横軸の2つの視点で,藍染めを授業に取り入れてことで,自分たちの身の回りに残っている伝統・文化の価値に改めて気づき,次世代の発展へつながる意識の形成に役立つものとなった。
3.世界に誇るカイハラのジャパン・ブルーのデニム地で絵本バッグを製作させ,ポケット部分に日本の伝統色で模様をつけたり,刺繍をさせたことが成功したことから,「学習内容を具体的なモノの中にイメージ表現させる」というストラテジーが,今回の授業では有効に働いた。
4.日本の衣生活の伝統・文化を世界に発信する授業のモデルを本研究が示したということである。生徒が製作したバッグは,絵本を入れてモン族の保育園に寄贈された。モン族の支援団体シャンティ山口が現地に届けてくれた。このように絵本とバッグは現実に海を渡り,モンの子どもたちの文化財に加わった。この様子を映像で見た生徒たちの意識は変化した。先人に学び,自らが情報を世界に発信する『生活文化力』を身につけることで,生徒たちは日本人としてのアイデンティティをもった知性と情感が豊かな人間に成長することができる,と考えている。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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