日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: A4-2
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第57回大会:口頭発表
ものづくりの精神を伝える家庭基礎衣生活分野の授業
染織の日本の技を生かした海を渡ったキモノから
柴 静子日浦 美智代i一之瀬 孝恵*高橋 美与子
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抄録
「目的」 昨年,「モードのジャポニスムを通して日本の布と着物のちからを発見する衣生活領域の授業開発」というテーマで,日本の伝統と文化を見出させる衣生活学習を「家庭基礎」において開発し,実践・評価した。アンケート調査等を通して,この学習の開発が適切であり,効果が多大であったことが証明された。生徒はモードのジャポニスムとして西欧に熱烈に受け入れられた着物が,コルセットによって成形された窮屈なドレスの構造そのものを変えるという「ちから」をもったことに驚きを感じ,このような日本の衣生活文化を未来へと伝えていかなくてはいけないということを実感することができた。しかし次の2点は研究課題として残された。1.明治期に西欧に渡り日本文化への熱烈な興味と理解をもたらすことになった幕末の小袖,明治期に椎野正兵衛商店等から輸出され,外貨を得てわが国の近代化を担った「キモノ風ガウン」など,意味ある衣装に実際に触れさせることによって,世界に誇る日本の服飾文化やものづくりの精神をより多角的に生徒に再発見させることができるのではなかろうか,2.実物衣装とその他の教材(映像,図録,ファッショントランプ等)を組み合わせることによって,海を渡って西洋に迎え入れられた日本の染織品の価値について,グローバルな視点からより深く理解させることが可能になるのではなかろうか,という2点である。  そこで今回の研究においては,昨年度の成果と課題を踏まえて,実物衣装の観察と考察,及び椎野正兵衛の「ものづくりの精神」への理解という2つを柱とした授業を開発し,実践・評価して,普及可能な学習モデルとして提案することとした。具体的には,広島大学附属福山高等学校の「家庭基礎」において,「海を渡ったキモノから『染織の日本』を再発見する授業」を実験的に行い,各種調査を通して評価し,修正して,授業モデルを作成することを計画した。「方法」教材としては,広島大学の人間生活教育原論研究室が欧米から取り寄せた明治期の輸出用キモノ風ガウン,京都服飾文化研究財団が主催した「モードのジャポニスム展」の図録,ボストン美術館収蔵の着物展の図録「Kimono Beauty」,各種映像資料を中心的に使用することとした。実験授業では,実物衣装とこれらの資料を組み込んで学習内容を豊かにし,江戸から明治へと続いた,世界に誇る我が国の染織の技やものづくりの精神について発見的に探究させ,伝統と文化を深く理解させるとともに,これを基盤として現代の衣生活についてクリティカルシンキングさせることをねらった。さらに7時間かけて授業を行うクラスと,衣装の観察時間を短縮するなどの工夫を加えることによって,ほぼ同じ内容の授業を4時間で行うクラスを設定し,ねらいの達成度にどのような違いが出てくるのかを考察した。                   「結果」 授業の効果について,一連の授業の直前と直後にキモノについての価値観や認識を測るためのアンケートを実施し,さらに最終授業では,学習内容についての興味・理解・態度を測るアンケート調査を実施した。その結果,4時間の授業と7時間の授業で,有意差が見られる項目は少なく,4時間授業であっても7時間授業と同程度に興味・理解・態度を持たせることができる,ということが示唆された。 しかし,全ての質問において,「強い肯定」を示した生徒の割合は7時間授業のクラスの方が多いことから,授業時間を十分とることで,学習への興味や意欲が強くなるという効果があると考えられる。また,有意差の見られた項目から知識理解については,所要時間を短くしても,指導上の工夫次第で殆ど変りなく習得させることができるが,興味をより向上させ,より望ましい態度育成を目標とした学習を展開するためには,ゆとりある指導時間が必要であるということが考えられる。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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