抄録
目的 従来、綿・麻・合成繊維用とされてきた洗剤は「弱アルカリ性」のものが、毛・絹用とされてきた洗剤は「中性」ものがほとんどであった。しかし、市場の多様化により、前者の洗剤の中にも「中性」表示のものが増えてきた。また、漂白剤や柔軟剤を使用している家庭も多い。一方、中学校技術・家庭科(家庭分野)の教科書には洗剤について従来通りの液性での分類による記載が多く、漂白剤や柔軟剤については学習指導要領解説で取り上げられていないこともあり、扱われていない教科書が多い。本研究では、中学生の洗濯に関する意識調査と授業実践から、教科書への記載方法や中学生の洗剤・漂白剤・柔軟剤の選択方法の実態とそれに見合った指導法について検討することを目的とする。
方法 2013年12月に、神奈川県内公立中学校の1年生4クラス115名(男子62名、女子53名)に対し、質問紙調査を実施した。
また、2014年2月に同中学校1年生4クラスにおいて、L社のWebページをプリントアウトした資料と質問紙調査の一部を用いて、セーターを洗濯するのに適する洗剤・漂白剤・柔軟剤を選択することについての授業実践をおこなった。
結果および考察 洗濯に関わっているか、という質問に対して、洗濯(洗濯物を洗濯機に入れて洗う、部分洗いをする)をおこなっている生徒は48%ではあるが、洗濯物の仕分けから干してたたむまでのなかでいずれかに関わっている生徒は94%であり、衣類の手入れについて部分的ではあるもものの主体的にかかわっている生徒が多いといえる。また、洗濯の方法を知っている方がよいと考えている生徒が93%、自分のものは自分で洗濯した方がよいと考えている生徒は71%おり、衣類の手入れの学習内容としての有用性が示唆された。
洗剤・漂白剤・柔軟剤については、それぞれ100%、67%、89%の家庭で使用されている。セーターの洗濯で使っている洗剤について、毛・絹等用の中性洗剤を記入した生徒は54%、綿・麻・合成繊維用の中性洗剤を記入した生徒は35%、弱アルカリ性洗剤を記入した生徒は8%であった。洗濯物の種類によって洗剤を変える必要があることがわかっていても(89%)、実際には変えずに洗っている家庭も26%あった。
授業実践の流れはおおむね以下の通りである。1)自宅で調べてきた洗剤の使用状況をグループ(3~4人)で確認しあい、他の家庭との違いや疑問に思ったことを挙げる。2)グループで、セーターを洗濯する時に用いることのできる洗剤・漂白剤・柔軟剤を根拠をもって選ぶ。3)選んだものを発表し、他のグループと比較する。
授業実践の1)については、特にセーターを洗う時の洗剤について、家庭ごとの違いや他の繊維との違いについて挙げたグループが75%を占め、洗剤の選択について主体的に考える上でセーターを扱うことの利点が示された。2)と3)について、洗剤については、液性(中性かどうか)を見て選ぶグループ(30%)と用途(繊維の種類)を見て選ぶグループ(62%)があり、発言の中でもどちらを優先して選んだらよいか迷ったという意見が4クラスとも出た。洗濯用洗剤の多様化に合せて、教科書でも綿・麻・合成繊維用の中性洗剤の扱いについての記載が必要であろう。漂白剤については使うグループ(43%)と使わないとしたグループがあり、家庭での使用状況が洗剤・柔軟剤に比べて低いことが関係していることが考えられる。柔軟剤については、88%のグループが選択している反面、使用している家庭が多いものの正しい使い方や特性について理解されていない面があることも示唆された。漂白剤・柔軟剤についても教科書への記載が望まれる。
その他、この授業実践でのグループ活動中、組成について実際にセーターを手に取って確認している生徒や、毛と合成繊維の混紡の場合、どちらの繊維に合わせて洗剤を選んだらよいか考えている生徒が4クラスともおり、生徒の考えを深めていくうえで適切な教材であることが示された。