日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: B3-1
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第57回大会:口頭発表
授業「学校を設計しよう」における生徒の協働と思考の深まり
問題解決プロセスにおいて解決案の練り上げを可能にする授業方略
*荒井 紀子佐藤 恵美清水 美歩蕗
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抄録
<目的> 生活問題の改善・解決を教科目標に含む家庭科は、授業を通して生徒の思考力・判断力や問題解決力を育むことが求められている。しかし具体的にどのような手立てをとることでそれが可能になるのかについて実証的研究はこれまで十分にはなされていない。問題解決の学習プロセスにおいては、とりわけ「問題の特定」から「解決方法の提案」「選択肢の多角的検討」に至る意思決定プロセスが重要である。本研究では、生徒が意思決定の学習プロセスを反復することにより解決案の練り上げが可能となるような授業の方略について、住居領域のモデル授業をもとに実証的に検討することを目的とする。と同時に、これらの方略が生徒の思考や協働に与える意味や効果について分析する。
<方法> 福井大学附属中学校の校舎改築をひかえ、そこで生活する生徒の立場から設計を提案するという問題解決型の授業(全14時間)を開発し、中学2年生の技術・家庭において実践した。授業はその進行状況や生徒の様子に応じて、実践者と研究者らが協働して計画を練るアクションリサーチの方法をとり、授業のビデオ録画、参与観察、生徒の作品と記述をもとに結果を分析した。題材名は「学校を設計しよう」、学習目標は1. 快適で居心地良い学校空間をイメージできる、2.「快適」の意味(機能性・安全性、居住性、衛生等)を理解する、3. 間取りの読み取りと設計の基礎的な知識・技能を身につける、4. 学校生活の主体として、現状を批判的に検討し新たな空間を提案することができる―の4点である。グループ毎の学習において各自が主体的に考え、設計案の協働の練り上げが可能となるよう、問題解決のプロセス―a. 問題への気づき、b. 現状分析、c. 問題の特定、d. 解決方法と選択肢の提案、e. 選択肢の多角的検討、f. 実行、g. 省察―を確実に踏むことができる授業の構造化を図った。特に以下の4点に配慮した。1)設計のコンセプト作り(c.問題の特定)から設計案の提示(d.選択肢の提案)に至る場面において「価値意識」と「問題点の解決」の双方を意識化する。2)グループで設計を練り上げるうえでc.からd. e. f. を往復して考える省察の機会を複数回、設ける。3)生徒にとっての学習の最終目標(校長に設計案を提出)を明確化する。4)専門家(建築家)による特別講義と助言の場を設定する。
<結果> 生徒達は総じて熱心に取り組み、以下のような結果が得られた。1.設計コンセプト(こんな場所にしたい)を具体的な設計に落とし込む際に、「価値意識」(精神的・情緒的等の居心地の視点)と「問題点の解決」(現状把握をもとに機能性を追求する視点:通風、温度、広さ、動線、収納等)の両面からの検討を促した。生徒がコンセプトを具体化する上で、また住居学習の基礎を理解し応用するうえで、これらの視点は有効であった。2.初期段階のグループ検討に加え、中間の専門家の助言、テスト問題に組み入れた省察的検討のための設問、グループ案に対する各個の批判的検討など、複数の省察の機会を設けたところ、節目毎にグループの議論が活発化し、新たな探究活動や設計の練り上げが確認された。3.校長への設計提案という目標は生徒の意欲を引き出し、「新しい附属中学を創ろう」「後輩のために良いものを設計したい」「採用される案を作りたい」との想いが共有化された。4.ゲスト・ティーチャーとしての専門家の話と発表時のコメントは、生徒の知的関心や意欲を刺激し、生徒が改めてコンセプトに立ち返って省察し、設計の質を繰り上げる上で効果的であった。授業終了後の感想では、総じて生徒自身「よく考えた」ことの手応えが綴られていた。また授業前後のアンケート結果から市民性意識や協働学習への共感の伸びが確認された。以上から、上記の4つの方略は、問題解決型の授業に於いて生徒の思考力や省察力を鍛え、探究活動を活発化させる上で一定程度、効果のあることが示唆された。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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