抄録
<目的>
1989(平成1)年の学習指導要領は、小学校・中学校・高等学校において家庭科を男女が共に学ぶ教科として位置づけた画期的な改訂であった。それは、本改訂が戦後新教科として家庭科がスタートして以来、男女が共に学ぶ教科としての再出発の改訂であり、女子差別撤廃条約が謳う性別役割分業意識の見直しという役割を担った改訂でもあったからである。爾来、四半世紀を迎えようとしている。しかし、その後の学習指導要領の改訂では、家庭科の授業時数はすべての学校段階で削減され、かつてない少ない授業時数の中で教育効果が求められる事態となっている。
一方、近年の教育改革では、知識基盤社会においてたくましく生きる力を育成するため特定教科の授業時数の増加や学力調査による検証が進められている。教育成果を挙げるためには、限られた授業時数の中で知育を開発することが求められ、それを保証する教育内容を整えなければならない。
筆者は、上記の教育実態と改革の方向性を見据えながら、家庭科のカリキュラム構成の新たな視点としてトピック学習について研究を進めている。トピック学習の特徴は、①学習者の興味関心や日常生活と密着した主体的な学習参加を可能とすること、②それは学習者に固有の個性的な学びを促し、学習意欲の継続と共に実感を伴った分かり方を可能とすること、③トピックに対する学習者の切り口により学習対象も学習活動も多様であり、発達段階による認識の深化・相対化が可能であること等の学びを期待させる。一方、そうしたトピック学習の醍醐味は、短所にもなりうる。それは④学習者のトピックに対する個性的な切り口と多様な学習活動は、認識対象に偏りをもたらし、その範囲と水準に差を生じることになる。
トピック学習は、自ら学ぶ力を育てるところにあり、従来の教科の枠組みの中に収まりきらない学びも期待される。学習対象の範囲と水準は学習指導要領により一定程度担保されるとしても、教科内容には内容構成の原理と系統性が求められる。それは短所である教科内容の偏りを克服することにもつながる。筆者はその原理を「生活構造」に求め、開発トピックの学習の範囲と水準について検証することを目的とする。
<方法>
1. 平成21年度~平成25年度の免許状更新講習参加者が、学校段階別に2~5名のグループを構成して開発したトピックを分析する。
2. トピックの開発傾向を把握するとともに、新たな視点から複数の分野を横断するトピックを選定し、学習指導要領の内容と照合しながら学習範囲と水準について分析し、予想される学習効果と系統性について検証する。
<結果と考察>
1. 開発されたトピックは、その特徴により大きく3つに分類される。一つは、同じ分野の内容をさまざまな視点でとらえ、内容を再構成した事例である。二つは、現行分野の内容を優先しつつ複数の分野を横断して開発した事例である。三つは、新たな視点で生活を総合的にとらえるため各分野を横断するトピックを開発した事例である。
2. トピック事例を対象に、学習範囲と水準、予想される学習効果と系統性など授業づくりへの活用について提案するとともに、カリキュラム構成に向けた課題を明らかにした。