日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: P30
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第57回大会:ポスター発表
大学生の自立に関する研究
日本とスウェーデンの比較調査より
*長 拓実河村 美穂
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キーワード: 自立, 家庭科教育, 自立尺度
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抄録
研究目的
 日本は諸外国に比べて青年の自立が遅れていると指摘されている。この課題に応えるために、さらに家庭科教育の目標であることからも、家庭科において自立の学習を扱うことの意味は大きい。これまで青年期の自立とジェンダー意識や精神面、および経済面等との関連をはかりカリキュラムに反映させた家庭科の実践研究が行われてきた。しかし現状では青年の自立が遅れているというこの問題の解決には至っていない。これらは家庭科という教科だけで解決できるものではないが、家庭科で行っている自立に関する学習が必ずしも学ぶ側である生徒の実態を反映したものとなっているのかを再検討する必要があるのではないだろうか。以上の問題意識から、本研究では日本人大学生とスウェーデン人大学生の自立度調査の結果より、日本人大学生の自立の実態と現状での課題を明らかにすることを目的とする。
研究方法
 日本とスウェーデンにおいて、大学生と中学生を対象とした自立に関する調査を行った。質問紙は、大石ら(2008)による自立尺度を参考に作成し、7つの因子「主体的自己」、「協調的対人関係」、「社会的関心」、「生活管理」、「生活身辺処理」、「経済的自活」、「共生的親子関係」、合計31の尺度から作成し、5件法で回答を求めた。回答結果については、国と性別の二要因による分散分析を行った。また、「自立の定義」と「将来プラン」についてどのように考えているかを自由記述で回答を求めた。
結果
 日本人大学生は、スウェーデン人大学生に比べ、7つすべての因子において平均値が有意に低かった。性別では、女性が男性よりも有意に低い値を示したのは「主体的自己」であった。一方、男性の方が有意に低い平均値を示したのは「生活管理」、「生活身辺処理」であった。
 自立の定義に対する自由記述の回答については、何度もよく読みカテゴリーを生成し分析したところ、日本人大学生とスウェーデン人大学、共に『精神的自立』、『生活的自立』、『経済的自立』といった、3つに分類することが出来た。日本人大学生の回答では「親に頼らない」といった、親離れを示す記述もあり『経済的自立』に関する回答が多くを占めていたという点からも、教育費を初めとして親に頼って生活している日本人大学生の現状が明らかになった。一方、スウェーデン人大学生は『精神的自立』に関わる『Make a decision(自己決定)』、『Take care of yourself(自己管理)』、『Do what you want(したいことをする)』といった「主体的自己」に関する回答が多く、自立の重要な要素と考えていることが分かった。
 両国の大学生の自立尺度の差や自立の定義の違いを検討するために、大学生調査と同様の質問紙(経済的自立因子尺度を除く)を用いて、中学生を対象とした質問紙調査を行った。その結果「主体的自己」因子において、日本人中学生の方がスウェーデン人中学生よりも有意に平均値が低いことが明らかになった。
 以上のことから、日本人大学生は、経済的に自立することで自立した人間になれると考え、精神的自立を重視していないと考えられる。日本ではスウェーデンと比べると政府等の公的機関からの経済的な援助を受ける仕組みが不十分であり、親に頼らざるを得ない現状から、経済的な問題を重視する傾向があるのではないかと考えられる。スウェーデン人大学生の自立度が日本人大学生に比べ高いということは、中学生調査における「主体的自己」因子の高さが大きく関係し、自立を果たしていく上で「主体的自己」が中心となるのではないかと考えられる。このことより、家庭科では、衣食住といった知識や技能の習得を重視する分野の学習においても、自身で考えて生活を切り拓くための能力の獲得をより意識した授業が求められる。

 大石美佳、松永しのぶ(2008), 大学生の自立の構造と実態 ―自立尺度の作成―, 日本家政学会誌 Vol.59 No.7 461-469
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© 2014 日本家庭科教育学会
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