抄録
【研究目的】小学校家庭科は国語や算数のように全教員が担当することはない.しかし研究校に指定された場合,全教員で家庭科教育研究に取り組まなければならない.本研究の目的は,家庭科教育研究の指定校になった小学校教員がどのような不安を抱くのかを明らかにすることで,不安軽減策のための基礎資料を得ることである.
【研究方法】家庭科教育研究の指定校に所属する小学校教員37名に,家庭科教育研究に関するアンケートを実施した.
アンケート内容は,1)教職経験,2)性別,3)家庭科の授業経験,4)家庭科指導の意欲,5)家庭科指導の自信,6)自身の生活への反映度,7)役立つと思う研修内容,8)有効だと思われる情報収集の方法,を問うものであった.4)~8)は4段階尺度で尋ね,「とても…」4点,「まあまあ…」3点,「あまり…」2点,「まったく…」1点として平均点等を算出した.5)についてはどのようなことに自信がある(ない)のか自由記述でも尋ね,帰納的にカテゴリー分類した.
【研究結果】専科としての家庭科授業経験者は35%,担任としての家庭科授業経験者は35%,授業補助としての経験者は5%で,いずれか一つ以上の授業経験者は54%に過ぎなかった.さらに,家庭科授業を見たことがある教員は73%で,授業をしたことも見たこともない教員は5%であった.
設問4)の家庭科指導の意欲は平均3.1点,設問5)の授業実施に対する自信は2.3点,設問6)の自身の生活への反映度2.8点であった.意欲の高さに比べて,授業実施に対する自信は低い.
さらに設問5)において「とても自信がある」「まあまあ自信がある」と回答した14人を[自信あり群],「あまり自信がない」「全く自信がない」と回答した22人を[自信なし群]とした.未回答者は1人であった.「授業経験なし」は,[自信なし群]で55%,[自信あり群]で29%,「授業参観経験なし」は[自信なし群]で27%,[自信あり群]で21%であった.授業参観経験より,授業経験の有無のほうが自信と大きく関係すると考えられる.
[自信あり群]が自信ないと記述した内容は,効果的な授業づくり(14%),最新の知識不足(14%),時間不足(14%),知識理解不足(7.1%)であった.一方,[自信なし群]は,知識技能不足(46%),授業経験不足(27%),効果的な授業づくり(9%),時間不足(9%)であった.[自信なし群]では特に「ミシン(裁縫,手芸含む)」を挙げた教員が23%いた.つまり[自信なし群]は授業経験がないことから,授業実施そのものに不安を抱いており,授業経験を経て自信が持てるようになってようやく研究レベルでの悩みを持つようになると推察される.
設問7)では,役立つと思われる研修内容として13項目挙げたが,どの項目も3.1~3.7点の範囲で役に立つとの回答であった.その他の自由記述による希望はなく,[自信あり群]においても何が必要なのかの判断できるレベルには至っていない.
設問8)情報収集の方法の有効性については,「直接対面による講師の講話」が3.7点と最も高かった.「内容や事例等が豊富に盛り込まれたインターネットサイト」が3.5点で次点だった.なお [自信あり群]は「直接対面による講師の講話」が3.9点で,他の方法と比べてとびぬけて高かった。[自信なし群]は「内容や事例等が豊富に盛り込まれたインターネットサイト」が3.7点で最も高かったが,「直接対面による講師の講話」3.6点,「内容がコンパクトにまとめられたインターネットサイト」3.6点,「内容がコンパクトにまとめられたリーフレット」3.4点も高かった.
【まとめ】小学校教員は家庭科に関する専門的な教育を受けておらず,家庭科授業経験のない教員も多い.そのため家庭科教育研究の指定にあたると不安を感じるが,授業未経験者と授業経験者には,不安内容に違いがある.研修等の際には授業経験の有無に応じて内容や方法を変える必要があることが示唆された.