日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: 1-2
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2014例会:口頭発表
人と人との関わりを通して育む児童の自尊感情
*増田 仁美志村 結美
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抄録
目的】
近年、人間関係の希薄化が様々な課題を生んでおり、特に、自尊感情の乏しさや人間関係を形成する力の低下など、子どもの心の活力が弱ってきていると言われている。教育現場では、日本には自分に自信がもてない子どもが多いという指摘が多く、「第7回世界青少年意識調査報告書2004」(内閣府)やPISA調査(OECD)などの各種調査からも、我が国の児童生徒については自分への自信の欠如や自らの将来への不安といった課題が見られると報告されている。また、そのことが不登校や問題行動の増加など、学校における今日的課題の要因になっているとの見解も多い。このような教育現場の中で、小学校家庭科学習指導要領(2008)では、家族の一員として成長する自分を肯定的にとらえ、衣食住などの学習を通して成長する自分を喜び自覚することで学習意欲をより高めることが示された。したがって、小学校家庭科において、自分自身を価値あるものとし、肯定的に捉える自尊感情を高める実践的な学習を行うことが求められている。そこで本研究では、児童の家族・友人との関わり方や家庭生活の実態、自尊感情に関する実態等を明らかにし、その結果を踏まえ、小学校家庭科において、家族や友人との間でお互いを認め合える良好な人間関係を構築し、自尊感情を高める授業検討を行うことにした。
【方法】
山梨県甲府市立A小学生4~6年生の77名に自尊感情等に関する実態調査(2013年11月実施)をアンケートを用いて行った。次いで、アンケート結果を踏まえ、授業検討、授業設計を行い、甲府市立A小学校6年1組にて試験的に授業実践(2013年12月12日実施)し、授業前後の児童の変容を検討した。
結果及び考察】
アンケート調査より小学生は概ね、家族に対しては安心感を抱いていたり、友人との間では楽しいといった感情を抱いていたりと家族・友人との関係に対して肯定的に捉えていることが明らかとなった。一方、家族・友人との関係に対して「つまらない」「緊張する」といった否定的回答を示す児童も数名みられた。家庭生活に関する項目「節水をしている」「ゴミの分別をしている」等に肯定的回答を示している児童は自尊感情に関する項目に対しても肯定的な回答を示しており、家庭生活の実態と自尊感情には関係性が認められた。感謝の気持ちや謝罪の気持ちを素直に表すことができ、勉強や運動に対して積極的に取り組もうと前向きな姿勢を示している児童が多かった。しかし、学年が上がるにつれて自分以外の他者からの見られ方を意識する児童が多くなる傾向がみられた。また、相手の意見を聞くことができる児童は多いが、自分の意見を主張できる児童は少なく、得意ではないことが明らかとなった。上記のアンケート結果と先行研究より、児童の自尊感情を育むために家庭科の授業の中で自分のまわりの人々とのかかわりを見直す必要性が挙げられた。そこで、今回は家族・友人に焦点をあて、授業実践を実施し、その後も、家庭・学校生活をよりよくするために自分にできる目標をたて、継続的に取り組めるような授業を開発した。以上より、人と人との関わりを通して児童の自尊感情を育むためには、自己主張・自己表現、自己受容、他者受容、家族における関係性、肯定的思考力が大切であると導き出された。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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