日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第57回大会・2014例会
セッションID: 3-3
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2014例会:口頭発表
多様性の顕在化によって相互作用を促す家庭科授業
*伊波 富久美
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抄録
【目的】
  学習者が“家庭生活について理解を深める過程”においては、他者との相互作用が重要であり、家庭科授業では各家庭の多様性を生かすことによって、それを促すことが可能であると考えられる。
  本研究では、各家庭における多様な営みを学校という場に持ち込み、その営みを顕在化させることによって、多様性を生かした家庭科授業の展開が可能であることを示す。そして、そこでの授業実践を例にとりながら、学習者が「自らにとっての対象の意味を確定していく」ために必要とされる他者との相互作用を活性化していく授業構成の方向性について示すことを目的とする。
 
【方法】
1)まず、ヴィゴツキーの「精神発達の理論」に基づいて捉えることのできる「人が生涯にわたって、家庭生活について理解を深めていく過程」への働きかけとして家庭科授業を位置づけた。そしてその上で「対他」の局面に着目しながら授業実践の分析を行った。
2)分析対象とした授業は、題材「くつ下のたたみ方」(1時間)であり、学習者が“くつ下のたたみ方を通して、衣生活への自らの関与の状況をふり返り、実践へとつなげていく”ことを目標としていた。対象は小学校5年生(男子20名、女子20名)計40名、授業者は教職歴十数年の教諭であり、2009年9月に実施した。
分析にあたっては、ビデオカメラを用いた授業記録などからプロトコルを作成し、それをもとに教師及び学習者間の相互作用の視点から検討を行った。
3)以上の授業分析結果をふまえ、相互作用を促す家庭科授業を構想していく上での方向性について考察した。  

【結果及び考察】
1. 各家庭での営みの外部化による差異の意識化と他者への共感
  各家庭での“くつ下のたたみ方”をモノを用いて外部化することによって、他者との差異が意識化され、多様な営み(12通りのたたみ方)が顕在化するとともに、他者の営みへの共感も生まれていた。家庭科は学習対象自体が既に多様性を内包し、他教科に比べそれを活用しやすい点に特色を見いだすことができた。
2. 状況に照らした吟味と新たな方法の案出
  学習者はくつ下の形状やたたむ時および履く時の効率性、あるいはゴム口の伸びの問題など、様々な状況において、各々の方法を相互に吟味していた。さらにその過程において新たなたたみ方も学習者によって案出されていた。
3. 自らに引き寄せた学び
  自らの家庭生活との関連についての言及が随所にみられるとともに、自己のそれまでの営みを反省的に捉える場面がみられ、対象を自らに引き寄せた学びになっていた。
4. 相互作用を促す授業構成
  以上、家庭科の授業において、他者との相互作用を深めていくためには、各家庭の営みを教室の場に持ち寄り、その営みを外部化していくことが有効であった。その際、モノの操作による演示は、実習における師範としての位置づけだけではなく、学習者が自らの意図や生活行為を外部化し、他者と相互にかかわっていくための差異化を促す手段として位置づけていく必要が示された。  
  また、差異への着目を教師が働きかけ、状況に照らした吟味を促すことによって、学習者が自らにとっての意味を確定していく授業となる可能性が示された。
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© 2014 日本家庭科教育学会
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