主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
現生マカク属は南-東南アジアを中心に広く分布しているが,鮮新世以降のユーラシア大陸各地から化石が報告されている。特に更新世以降の洞窟堆積物などからは多数の歯牙化石が得られており,現在よりも広い分布域を持っていたことが知られている。一方で化石として見つかりやすい歯の形態が種間で類似しているため,産出数の多い遊離歯化石の種判別は困難であり,種ごとの過去の分布域の変化や化石と現生種との系統関係は確定できていなかった。本研究ではそういった遊離歯化石のうち,歯種の同定が容易で咬耗が少ない下顎第三大臼歯を用い,幾何学的形態解析により現生及び化石歯の種の分別を試みた。化石資料は中国広西壮族自治区の前期~後期更新世の洞窟堆積物から発掘されたものを用いた。現生標本は,マカク属7種(M. arctoides, M. assamensis, M. cyclopis, M. fascicularis, M. fuscata, M. mulatta, M. nemestrina)及び近縁種としてヒヒ属(P. hamadryas)を使用した。歯の咬合面のランドマーク3次元データと歯冠アウトラインの2次元形状を3Dレーザースキャナーにより取得し,現生種間の種間変異を幾何学的形態解析法(MorphoJ, PAST, tpsDig232)により分析し化石歯と比較した。結果として,咬頭の高さやtalonidの形状について種判別の可能性が示され,fascicularis種群について咬頭が低く,咬頭頂が頬側または舌側に寄る傾向が示された。一方で,体サイズの大きく異なる種間においてもアロメトリー効果による形状変化は示されなかった。またこれらの比較から一部の化石歯について,主成分分析においてsilenus種群またはsinica種群に近い形態を持つことが明らかになった。