日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B2-5
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第59回大会:口頭発表
家教連京都サークルと京都府立高等学校男女共修家庭科実践
―家教連京都サークルの活動についてー
井上 えり子*唐津 育子田中 任代
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抄録

目的:本研究は、1973年4月に始まり1994年3月まで継続された京都府立高等学校の男女共修家庭科について、関係資料を収集整理するとともにその全容を解明し、その歴史的意義を明らかにすることを目的としている。 
これまで、共修実践を牽引した京都府立高等学校家庭科研究会(以下、府立研究会)の活動の解明を中心に、「資料保存と府立研究会の組織体制について」(2012年12月例会)、「府立研究会の指導資料について」(2013年)、「到達目標の作成について」(2014年)、「女子のみ「家庭一般」(通称「残家」)について」(2015年)を発表してきた。 
本報告では、これらに引き続き、家庭科教育研究者連盟(以下、家教連)の京都サークル(以下、家教連京都サークル)について取り上げる。家教連京都サークルは府立研究会の教育研究活動を推進していく上で大きな役割を果たしていたと考えられ、その活動の全容と共修実践における役割を明らかにすることを目的とする。
方法:筆者らのうち田中は1974年から、唐津は1980年からの家教連京都サークルのメンバーであり、長く活動に携わってきた。これらの経験と家教連京都サークルの夏季学習会資料などの関連資料を用いて、活動の全容と共修実践における役割について検討する。
結果:1962年に京都市立堀川高校定時制の安田雅子らによって京都サークルが結成された。1966年8月に家教連が発足し、1967年に安田、1968年に池田悠子、森幸枝らが家教連の会員となった。1971年12月には家教連京都支部第1回総会が開かれ、京都サークルは家教連に合流、家教連京都サークルとなった。 同サークルでは、月1回の例会と年1回の夏季学習会が開催され、共修家庭科の自主編成や共修実践の内容、到達目標、家庭科の独自性や教科論について議論・検討された。とくに、夏季学習会では、府立研究会の当該年度の重要課題が検討された。そして、ここでの研究成果が府立研究会に反映され、1973年から始まった京都府立高校の男女共修家庭科を推進していくこととなる。 
家教連京都サークルの活動は大きく4期に区分できる。Ⅰ期(1962~1981年8月)、Ⅱ期(1981年9月~1993年)、Ⅲ期(1994~2002年)、Ⅳ期(2003~2016年)である。各時期の特徴は、Ⅰ期は家教連京都サークルの結成と京都府立高校の男女共修家庭科の実施、Ⅱ期は京都府の教育行政の管理強化と男女平等教育実現へ向けた活動の高揚、Ⅲ期は1989年版高等学校学習指導要領改訂による男女共修家庭科の実施、Ⅳ期は1999年版高等学校学習指導要領改訂による2単位科目の設置とそれによる単位数の削減である。 
Ⅰ期では、主として共修家庭科の自主編成に関する内容が検討された。とくに教科の独自性を明確にするため、男女共修「家庭一般」の到達目標を家庭生活の「しくみ」と「いとなみ」に分ける案がサークルで検討された点が注目される。森によると「しくみ」の中で科学的認識を形成し、「いとなみ」によって生活に生かす実践力を養うことを目指したという。そして、この案は府立研究会に反映された。  
Ⅱ期では、教育行政により男子が家庭科を履修できないよう学校現場に圧力がかけられたが、これに屈しない家教連京都サークルの活動は共修家庭科を維持発展させる上で重要な役割を果たすこととなった。とくに、森は、サークル活動の中で、教科論、教科の独自性、学習指導要領の精査、男女共修家庭科の今日的意義、運動論、教師論などについて精力的に情報発信し、指導的役割を担った。 
Ⅲ期とⅣ期では、社会科学的視点やジェンダー視点の重視、新しい教授方法の探求など、Ⅰ期Ⅱ期で培ってきた家庭科の教科論と実践を発展させる活動が行われた。いっぽうで、家庭科教員の多忙化や新規採用者の抑制などから、サークルメンバーの減少や固定化が課題となり、これまでの蓄積を次の世代に引き継ぐための活動も行われるようになっている。

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