抄録
【目的】
「学習レリバンス」は、学習そのものを面白いと感じる「現在的レリバンス」と学習が将来役立つといった感覚である「将来的レリバンス」の2 つに分けて捉えることができる。両者のレリバンスがあった場合、男女とも継続的な学習を促進する意識が高い(本田2004)。つまり、小中高等学校での家庭科の学びにレリバンスを感じているかが、その後の家庭科教育の内容に関する学習意欲、すなわち進路選択に影響を与えると考えられる。
男女共修家庭科を学んできた大学生たちの学習経験および、家庭科教育のどのようなことに意義を感じているか、家庭科の学習レリバンスの構造を明らかにするとともに、その後の進路選択に違いがあるかを明らかにするため、大学での専攻による違いを分析することが本研究の目的である。
【方法】
男女共修家庭科を学んだ大学生に対して、アンケート調査を行った。本研究の目的に合わせて分析できるよう、教員養成系教育学部家庭科専攻の学生、教員養成系教育学部家庭科以外の専攻の学生、家政学・生活科系学部の学生、その他の学部の学生の4つのカテゴリーに合わせて対象者を選定した。
教育学部生および家政学・生活科学部生は、対象者が限られることから、これらの大学に所属する教員に協力をお願いし、質問紙調査を行った。調査の時期は2016年1月~2月である。教員を通して質問紙を配布し、授業時および個別に回収した。配布数は1,008名で有効回答数は946名であった(有効回答率93.8%)。
主にその他の学部生を対象にweb調査を行った。web調査は(株)マイボイスコムにモニター登録をしている学生に対してメールを配信して回答してもらった。調査の時期は2016年2月9日~12日である(有効回答数300名を目安に打ち切り)。メール配信数4,665名、有効回答数336名、有効回答率7.2%であった。
質問紙調査とweb調査を合わせた有効回答のうち、大学での専攻または性別が不明な者を除いた1270名を分析の対象とする。対象者の詳細は、教育学部家庭科専攻255名(女性232名、男性23名)、教育学部家庭科以外の専攻504名(女性369名、男性135名)、家政学・生活科系学部231名(女性229名、男性2名)、その他の学部280名(女性175名、男性105名)である。
【結果】
まず家庭科の学習経験について、調理実習、被服製作実習は経験したことのある者が9割以上であった。ロールプレイング、ふれあい体験学習、ディベート、ゲーム、実践課題などは全体として経験がない者が多かったが、家庭科専攻の学生は、比較的経験割合が高かった。家庭科専攻に進んだ学生の方が多様な学習内容や学習方法を経験している、または経験したことを覚えているといえる。教育学部の家庭科専攻以外の学生と家政学・生活科学系の学生では大きな差はみられなかった。
次に、家庭科に対する学習レリバンスについて、「好きだ」と「そう思う・どちらかといえばそう思う」割合は全体で約85%であったが、「そう思う」割合を大学での専攻別に見ると、家庭科専攻の学生は約80%であるのに対し、家政学・生活科学系の学生は約5割、家庭科以外の専攻とその他の学部の学生は約3割と大きな差があった。「役に立つ」と「そう思う・どちらかといえばそう思う」割合は全体で約90%で、「そう思う」者の割合は、家庭科専攻の学生で高く、その他の学部の者は低かった。「おもしろい」と思うかについては、「そう思う・どちらかといえばそう思う」割合は全体で約85%であったが、「そう思う」割合については、「好き」「役に立つ」と同様の結果であった。
教育学部家庭科専攻に進む学生は家庭科に対する学習レリバンスが非常に高い。一方、学校教育に対する価値を重く置いていると考えられる教員養成系教育学部の家庭科専攻以外の学生や、家庭科教育とのつながりが深い専攻と考えられる家政学・生活科学系の学生はそれほど学習レリバンスが高くなかった。しかし、全体としては、家庭科に対して肯定的に受けて止めていた。