日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: P01
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第59回大会:ポスター発表
食糧生産地における食育の可能性
*小野 恭子
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キーワード: 食育, 食糧生産地, 小学校
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抄録
研究の目的
現在において食肉加工等は工業化され,商店に並べられている加工済みの諸品を購入し,家庭で調理され食卓に並べられるものがほとんどである。この現状は都市部のみならず,食糧生産地域においても同様である。一方農林水産省は農漁村民泊など食糧生産地において,体験活動を行うことを推奨しているが,民泊をする対象として消費地である都市部の人々を対象としている。これらの現状を受け,本研究では肉牛を育てている畜産農家が多い地域にある小学校において,食肉加工にかかわる人々の気持ちを考える授業を実践し,地域の産業と自分たちの食生活についてどのような学びがあるのか、また食糧生産地における食育の可能性について検討することを目的とした。
研究の方法
授業実践は北海道道東地区に位置するA小学校の3年生3名,4年生4名の複式学級の児童を対象に実施した。実施時期は2014年9月であり,授業は学級活動の時間を使い1時間で構成した。7名の児童の保護者中2名が肉牛を育てている酪農家であり,子牛を買いある程度まで育てて売ることによって収入を得ている。教材は食肉加工センターで働く男性が主人公であり,自分の子どもとのやりとりや,食肉加工センターに牛を運んできた女の子やその祖父との会話から牛の命と向き合う話である『いのちをいただく』(内田美智子文西日本新聞社)を活用した。さらに授業では食肉加工センターで働く男性の気持ちを考えながら,自分たちの生活について振り返ることを主課題として設定した。分析にはワークシートの記述とICレコーダーで 録音した音声を文字おこししたものと教員間における協議会の記録を使った。
結果
肉牛は町の特産物でもあり,学校給食でも出たことのある食材であったため学級全員が生産していることおよび名産品であることを知っていた。また地域で生産している馬鈴薯やビートなどの農作物や加工品については「でんぷんになって全国で販売されている」や「ビートは絞って煮詰めて砂糖になる」といった答えが出ていることから,生産方法まで理解していた。しかし肉については,「殺されて切られて肉になる」という意見が出るのみでどのように加工されているか,明確に答えることはできなかった。 肉牛を飼育している酪農家においても,1名は積極的に子牛の世話をしていたが,1名は子牛を飼育舎で見ることはあっても日常に世話をしていなかった。さらに酪農家ではない5名は,飼育されているところを見たことはあっても,どのように飼育されているかについては詳しく知らなかった。しかし,積極的に子牛の世話をしている子どもの話を教師が取り上げることによって,近くに酪農家があっても具体的な牛の世話の仕方や酪農家の気持ちを理解することができた。一方で,牛肉を食べている消費者としての自分たちと生産者である気持ちに矛盾があることに気づき,その理由について考えることができていた。  食糧生産地であっても,畑作農家,乳牛の酪農家,肉牛の酪農家等の職種が異なると生産者としての気持ちに差がある。しかしそれぞれの立場を理解している子どもの意見を取り入れ,共有する食育の授業を実践することにより,自分たちの食生活について振り返り,生産者としての誇りをもちさらに食生活の改善に効果があるため、食糧生産地においても食育による学びの可能性があるといえる。
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© 2016 日本家庭科教育学会
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