抄録
目的
現代日本は少子高齢化から人口減少社会となっており、想定される地方消滅や産業のグローバル化といった社会変化から、生命の維持存続のための家族と地域の生活システムのありかたを、実生活に即して教育する必要性が高まっている。家庭科では、小学校・中学校・高等学校の全ての学習指導要領で家族と地域に関する内容があり、特に平成25 年から実施の高等学校学習指導要領では、目標に「家庭や地域の生活課題を主体的に解決する」ことが明記され、新たに青年期の自立と共生社会・福祉の内容が盛り込まれた。家庭科で学んだ生活の知識と技術を生かし、「家族と共生社会」の教育内容を充実させることは、持続可能な社会構築に向けて重要である。生活課題に即した「家族と共生社会」の効果的な教育内容と方法を、教員アンケート調査から検討することが本研究の目的である。
方法
東京家政大学で行われた平成27 年度家庭科免許状更新講習の選択領域「家庭科の授業づくりと教材化の視点」全12 講義のうちの「家族と共生社会」(報告者担当)の講義内容とそれに対する受講教員の事前・事後アンケート調査の内容分析をした。調査対象の教員は52 名である。事前アンケートは12 講義のうち特に関心のある講義に対する自由回答で、「家族と共生社会」に関心を持った教員は8名。事後アンケートは全員回答で、52 名(病院1 名、特別支援学校5 名、幼稚園1 名、小学校5 名、中学19 名、高校21 名)。
結果
免許状更新講習の事前に以下の講義概要を提示した。「現代日本は少子高齢化から人口減少社会となっており、社会統計などから家族や生活の変化の現状を客観的に捉え、今後の予想とこれからの生活課題を見出す。また、現代は多様な生き方が認められつつあるが、誰もが孤立せずに安定した生活を営むには、どのような家庭や地域、共生社会をつくっていけばよいか、諸外国の例をとりあげながら、家族と共生社会を考える。」
事前アンケートで「家族と共生社会」に関心を持った教員8 名のうち、家族領域の指導に困難を感じている教員は5 名(中学1 名、高校4 名)。家族の機能や役割の変容・家族形態の多様化、家族と地域の繋がりの教材化について関心があった。
事前アンケートの要望を踏まえ、以下の内容の講義を行った。
講義内容「家族と共生社会」
1.日本の少子高齢社会と家族の現状
・総人口減少・少子高齢社会・リプロダクティブヘルスライツ
・産業構造の変化と小家族化・雇用形態の変化と貧困問題
2.共生社会
・共生社会政策・社会保障制度改革・協働・ボランティア学習
3.地方創生
・地方消滅の可能性と原因・地方創生への生活課題
・家庭科から家族と地域の生活課題への実践的解決
4.諸外国の家族と地域のつながりの例
・フランスの家族政策と異世代同居
・諸外国の例を紹介しあうことから異文化理解と日本への応用
事後アンケートでは、「家庭の事情が関わる部分の扱いにどう踏み込むべきかわからなかったが、さまざま家族や地域の生活課題を客観的に伝え、その対策や予防について調べ考えさせることは、どのような家庭の生徒にもためになり、恐れてはいけないと気付いた」との内容と同様の意見が多かった。知らないことが貧困などの生活困難を促進することを考えれば、生きた役立つ情報を伝えることが教師の役目である。自助・互助・共助・公助と国際関係の空間的広がりと過去から現在への有機的な繋がりにより生活が成り立っていることを、衣食住と人間関係から実感とともに理解し今後を考えることは実践的科目である家庭科の強みであり、社会科と連携しながら進めることで相乗効果があると考えられた。