日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: P24
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第59回大会:ポスター発表
特別支援学校高等部と連携した消費者教育の実践
-高校生におけるキャリア教育の視点から-
*皆川 勝子福井 典代
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抄録
【目的】
  平成24年12月「消費者教育の推進に関する法律」の施行や平成25年4月高等学校新学習指導要領の完全実施を受けて、消費者が自主的・主体的に考え社会参加の中で自らの責務や役割を果たしながら行動していく「消費者市民社会」を目指す消費者教育の重要性が増している。
  愛媛大学附属高等学校では,平成24~26年度「文部科学省消費者教育推進のための調査研究事業」に取り組む中で、学力重視の生活をしている生徒たちが消費者としてのコミュニケーション能力や学習意欲の向上に寄与し、自ら適切な行動をしようとする実践力に繋がることが認められた反面、時間・場所・人数等の制約があり「体験」と「交流」が難しいことも分かった。また愛媛大学教育学部附属特別支援学校高等部は、平成26年6月から文部科学省「キャリア教育・就労支援等の充実事業」の委託を受け、研究課題「特別支援学校小学部・中学部・高等部の系統的なキャリア教育の推進および就労支援体制の構築」のもと、領域・教科を合わせた指導(生活単元学習・作業学習)を中心に、全ての子どもの卒業後の「働く生活」を実現するために研究を行っている。
  そこで本研究では、平成28年4月「障害者差別解消法」の施行に向けて、2年生選択科目「生活総合B」において、特別支援学校高等部と連携して、「作業学習」で一緒に作業を体験するという自然な学びの中で友情を育むとともに、将来の「働く生活」という視点から消費者教育に取り組んだ。
【方法】
2年生選択科目「生活総合B」の生徒15名(女子14名、男子1名)を対象に、特別支援学校高等部と次の(1)~(6)に示す作業交流を計画し、各授業実践後に生徒が記述した感想をもとに計量テキスト分析した。実践期間は平成27年5月~平成28年2月である。
(1)高等部の作業学習に参加した後、給食時間に持参した弁当を一緒に食べる交流
(2)「ふれあいバザーinえみか」への参加
(3)本校の愛附祭で両校生徒協働による「おでカフェ.」の準備と開店
(4)2回目の作業学習に参加した後、一緒に給食を食べる交流 
(5)特別支援学校祭への参加
(6)PTA行事「みかんの家での作業と昼食」交流
【結果】
 「生活総合B」選択生徒の各交流後に自由記述した感想の内容について、計量テキスト分析を行い、多く出現している用語のうち上位10語を集計してまとめた結果、次の4点が明らかになった。
(1)「思う」という語句が各回ともに上位にあり、生徒たちは素直に思ったことや感じたことを表現した。また、交流の回数が増すごとに抽出語の数が増えており、各生徒が記述した感想内容が長文になった。
(2)本校愛附祭における「おでカフェ.」の開催は、生徒にとって初めての体験であり、一緒に作業している特別支援学校生徒の仕事に対する意識の高さを痛感する機会となった。同時に、特別支援学校の生徒たちにとっても、本校で開催することにより来客数が大変多くなり、実践の場として有効であるという共通の認識を持つに至った。
(3)特別支援学校高等部の作業学習では、同年代の生徒たちと一緒に作業に取り組むことで「仕事」について考える機会となった。特に「1つ1つの作業の積み重ねが品質の高い製品につながる」「もし褒められなくても自分に与えられた仕事に取り組める」等の特別支援学校作業学習における「仕事」に取り組むうえでの視点は、本校生徒にとって貴重な体験となった。
(4)特別支援学校高等部では、今回の交流授業を通して、これまでの「働く生活」を目指したキャリア教育に加えて、将来の人生の質の充実のためには消費者としての資質を養うことが大切だと考え、家庭科と関連の深い「生活単元学習」の授業に消費者教育の観点を盛り込んだ授業改善に取り組むなど、相互に有効な交流となった。今後も家庭科と領域・教科を合わせた指導(生活単元学習・作業学習)との相互により良い連携方法を模索し、消費者市民として「自立し健康に生きていく力」を養成するための消費者教育に、附属学校園全体で取り組めるようにしたい。
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© 2016 日本家庭科教育学会
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