日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: A2-3
会議情報

第60回大会:口頭発表
中学校の調理実習における科学的リテラシー
社会科学的内容の学びを中心に
望月 朋子*河村 美穂
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
研究目的
 理科や数学をはじめとした科学教育においては、科学的リテラシーの育成に関する研究が蓄積され、日本の子どもたちが概念的理解に基づき非定型的問題を解決する力が相対的に低いことなどが明らかにされている。家庭科教育の食生活学習においても科学的に理解することを重視してきているが、科学的理解の内実が十分に示されてきてはいない。とくに近年の科学的リテラシー概念の普及に伴って、家庭科での科学的リテラシーとは何かを考える必要に迫られている。
 すでにこれまでの研究において、家庭科の科学的リテラシーを文化的、自然科学的、社会科学的の3つの要素から検討した結果、調理実習を含めた食生活学習において文化的、自然科学的内容について学んだ生徒は、文化的な内容の理解は深まるが、自然科学的な知識の定着は内容によって制約があることがわかった。
通常、文化的、自然科学的、社会科学的3つの要素すべてを包含する教材の開発は難しいことから、今回は社会科学的な側面の内容について学ぶ教材を準備し、中学生の学習の実態と学習内容の定着の様子を明らかにすることを目的とした。
 なお、本研究では昨年度までに引き続き、家庭科における科学的リテラシーを、「自然界および人間の活動によって変化した自然や生活、社会状況について理解し、必要に応じて意思決定するために、文化的、社会的、自然科学的な知識を活用し、自らの生活に即して問題を見分け、証拠に基づき生活がよりよくなるような結論を導く能力」とする。

研究方法
 対象とした授業は2016年11月~2017年3月に実施した静岡県東部公立中学校1年生3クラス94名(男子43名、女子51人)「ハンバーグを作ろう」である。本研究での分析データは以下に述べる1.質問紙調査と2.生徒のワークシートにおける記述の2つである。調査にあたっては、対象生徒に対して事前に研究目的等を説明し了承を得て行った。
 1.質問紙調査:授業前(2016年11月~12月)と授業後(2017年3月)の2回に同一の質問紙調査を実施した。質問項目は、A食品科学に関する知識の定着度をはかる問題、B社会科学に関する知識の定着度をはかる問題である。Aは教科書の図を用いて作成したハンバーグに関する9の設問に、選択肢で回答を求めた。Bはハンバーグの歴史や文化、流通に関する8項目について選択肢で回答を求めた。
 2.ALTの先生(オーストラリア出身)への手紙「家で作る以外の日本のハンバーグについてくわしく説明します」:生徒が学習内容をもとに記述した手紙の内容をデータとして、カテゴリーを生成、分類して検討を行った。

結果と考察
 1.A食品科学に関する知識の定着度の正答率は、9つのうち8つの設問で向上した。9問の問題に対して満点9点として点数化した得点も事前3.5点から事後5.1点となった。B社会科学に関する知識の定着度については、歴史に関する2つの設問、流通に関する2つの設問が向上していた。8問の問題の正解を8点満点とした得点は、平均5.0点から6.0点に上昇した。
 2.生徒の記述には、「日本のハンバーグは、にくだけでなく、とうふでつくるはんばーぐもあり、とっぴんぐにはだいこんおろしをのせるなど、わふうのハンバーグもあります」「日本のハンバーグは外国とちがいおにくがちいさかったりします」といったメニューや味、大きさに関するものが多くみられた。
以上のことから、自然科学的および社会科学的な内容を学んだ生徒の知識の定着は良好といえる。さらに社会科学的内容の知識のうち、生徒にとってはハンバーグのメニューや味、大きさといった事柄が印象に残っていることがわかった。
著者関連情報
© 2017 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top