日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: A3-6
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第60回大会:口頭発表
活動環境や内容に応じた衣服着用力の育成
小学校家庭科における指導法の開発と検証
福田 典子
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抄録
【目的】衣服の役割には,物理的役割や社会的役割などがある。これまで小学生に対する衣服の着用指導においては,衣服の物理的役割に注目させ,保健衛生上の着用および生活活動上の着用を中心に取り上げられてきた。保健衛生上の好ましい衣服選択・着用は,主に着衣全体による温熱的調整機能および下着による皮膚清浄維持機能を理解させる意図で説明される場合が多い。一方,生活活動上の好ましい選択・着用は,動的な快適性向上の機能を理解させる意図で説明される場合が多い。しかしながら,児童の生活においては,温熱的着用だけでなく,多様な活動場面において,より広い視点より着衣の選択力やコーデイネイト力が必要である。衣服選択においては,着用者の心身と衣服との調和性だけでなく,活動内容や活動環境と衣服との調和性を吟味し,より適切かつ効果的な衣服選択を実現できる意思決定力を育成することが重要ではないかと考えた。そこで本研究では,活動環境や活動内容に応じた衣服選択力および着用力の育成を目指した指導法の開発を行った。小学生にとって身近な着衣溶融事例や給食着等の着脱に注目し,それらを教材とした実証授業を行い,その教育効果を検証することを目的とした。
【方法】N県S大学教育学部附属N小学校第5学年に在籍する男女40 名を対象とした。本研究では,児童が多様な活動環境や活動内容に応じた衣服の着用計画をたてるという課題解決力を幾つかの実験を体験することを通して育成することを目標とした5時間の指導法を開発した。児童は,調理などの火や熱に近づく可能性の高い場面,給食配膳を担当する場面,体育授業で運動をする場面を想定し,着衣や脱衣(更衣)の意義や衣服選択の重要性を学んだ。①授業前後の児童の意識・知識・行動に関する自己評価(3件法)②授業者・学級担任・家庭科専科教諭に対するインタビュー調査③まとめの段階で児童が作成したコーディネイトカードの分析④授業観察者による児童の言動記録の分析,以上4つの資料より,多面的に開発した指導法の教育効果を検証し,成果と課題を明らかにした。
【結果】①意識・知識・行動の自己評価において,項目総合得点は,授業前平均7.32,授業後9.39となり,衣服選択および着用力に有意な向上傾向が認められた(p<.01)。授業前後の変化に注目すると意識・知識得点は行動得点よりも大きな変化傾向が認められた。衣服選択の自立度の自己評価に関しては授業前低位群児童の場合には,授業前平均2.71,授業後2.47となり,低下傾向が認められた(ns)。これは,授業後,活動環境や活動内容に適した衣服選択の難しさを実感し,授業前に比べて自己の達成度評価基準が高まったことが一因として考えられる。②授業者および参観者へのインタビュー調査より,本授業によって児童は場面に適した着用計画の重要性に関心を持ち,予想以上に環境や活動に応じた衣服選択や着用に関する意識面の高まりが期待できると評価された。③コーディネイトカードより,児童なりに根拠を持って着衣に求められる機能を追求し着衣選択をしようとしている様子がうかがえた。④授業観察記録より,児童が日頃無意識に来ている衣服に強く関心を持った様子がうかがえた。授業後,自分の命や皮膚を守り,より快適に活動するために衣服や生地に対して関心が高まったものと推察できた。本研究において開発した指導法に関して,ICT活用を試みたが未だ改善の余地があるため,今後はICTと実験実習をより効果的に組み合わせた指導法開発を重ね,その教育効果を明らかにしたい。指導法開発,実証授業の授業者,調査分析として協力された櫻井里菜教諭,授業案作成および授業観察,授業分析において助言を賜りました富岡隆二教諭,松下海教諭に深く感謝いたします。
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© 2017 日本家庭科教育学会
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