抄録
目的
ユネスコの世界文化遺産登録や、Sushiの世界的な普及に見られるように和食は世界の中でも注目を集める食事となっている。しかし、食の欧米化やコメ離れが社会問題となって久しいなかにあって、いわゆる伝統的な和食は高校生にとっては日常的な食事とは違うものになっているという現状もある。高校生という物事を客観的に見つめることが可能となる時期に和食を文化的にまた調理や栄養について多面的に学ぶことは和食文化の継承・創造する営みとして必須ではないかと考える。実際に数多くの和食に関わる授業実践は行われており、多様な授業の提案はあるものの、学び手である高校生がその授業をどのようにとらえ、何を学んでいるのかを詳細に検討した研究は必ずしも多くはない。
そこで、本研究は和食を文化的背景と調理の側面から学ぶカリキュラムを計画・実施し、この授業で高校生が和食について何をどのように学んだのかを明らかにすることを目的とする。具体的にはかつおだしの特徴とその取り方、基本調理、和食献立の特徴、和食献立の計画と調理、報告会という内容のカリキュラムを実施し、可能な限り収集した生徒による授業記録をデータとして生徒の学びの実態を明らかにする。
研究方法
対象としたのは都立高校2年生8クラス「和食を学ぼう」の授業である。授業は全10時間で次のように構成した。
(1)旨味の発見とかつおぶし
(2)かつおぶしを削って味わうワーク
(3)和食の基本を学ぶ調理実習(2時間)
(4)世界文化遺産としての和食
(5)かつおぶしだしを使った和食の調理計画
(6)かつおぶしだしを使った一汁二菜の調理実習(2時間)
(7)和食の調理実習報告会(2時間)
実施時期は2016年10月~12月である。
分析対象とした授業記録は(1)和食のイメージ調査(2)かつおぶしのワークショップ感想(5)和食の作成献立(7)学びのまとめである。なお今回の報告では実施クラスのうち1クラス(男子19名女子20名合計39名)の授業記録の分析結果を示す。
結果
授業開始時に行った(1)和食のイメージ調査においては、すし、天ぷら、すきやきのような海外でも和食の代表とされるような料理名や、「彩がよい」「色鮮や健康的」「味が薄い」などの和食の特徴を示すものが多く出された。
さらにかつおぶしを削り、市販のかつおぶしと比較しながらだしをとって試食、試飲するという(2)ワークショップの記録には、味や香りについての記述が多く挙がり、体験的に学んだことの結果が生き生きと示されていた。
和食の特徴を学んだ上で、かつおぶしの一番だし、二番だしを用いて(5)一汁二菜の献立を立てた記録からは、主菜として豚肉の生姜焼き、和風ハンバーグなど肉を使った料理が多く挙がり、魚料理が少ない結果となった。また副菜としてはきんぴら、ひじきの煮物など市販されている弁当によくある副菜が挙がる傾向を見せた。
高校生は認知している和食の料理に限界があり、実際に調理し食べるという場合にはより身近なメニューから作りやすそうなもの、食べたいものを選ぶ傾向にあり、調理操作の簡単なものを選択しやすいということが考えられる。