日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: P06
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第60回大会:ポスター発表
高等学校家庭科における介護食に関する学習内容の提案
早川 和江
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抄録
1.研究目的
 超高齢社会となった現在の日本において,健康寿命の延伸が大きな課題となっている。近年,高齢者のPEM(たんぱく質・エネルギー低栄養状態)が問題視されており,咀嚼や嚥下に障害のある方でも適切な栄養摂取が可能になるよう,食べやすい形状に調整した食事,介護食へのニーズは今後もより一層高まることが予測されている。
筆者はこれまでに,12年間にわたる介護食に関するニーズのアンケート調査結果から,内食,なかでも「介護食提供者が介護食を準備する際に必要なもの」が最も求められていることを明らかにした上で,それらとの関連から家庭科での介護食に関する学習の必要性を提言してきた1)。そこで本研究では,この調査で得られた回答を再度分析することにより,高等学校家庭科の中で取り上げることが望まれる具体的な学習内容について検討した。

2.研究方法
 介護食に関するニーズについては,無記名で自由記述によるアンケート調査を実施した。調査期間は2005~2016年で,毎年1クール,合計12クール開講された「介護食士養成講座」の受講者計368人を対象とし,このうち349人から回答を得た(有効回答率94.8%)。得られた回答をKJ法によりカテゴリー分析し,全体の傾向を把握した。その後,最もニーズの多かった「介護食提供者が介護食を準備する際に必要なもの」のカテゴリーを取り上げ,再度具体的な記述回答の内容を分析した。
分析結果のうち,「地元の食材を使った介護食のレシピ」に着目し,青森県の地域食材であり,高齢者の食事で留意したい良質の動物性たんぱく質を含む食材,ホタテを使った料理について,高齢者を対象とした嗜好調査を実施した。調査対象者は弘前市内の軽費老人ホームおよびサービス付き高齢者向け住宅の利用者で,施設職員の協力の元,食事の自立度が高く,聞き取りでのアンケート調査が可能な53人とし,このうち52人から回答を得た(有効回答率98.1%)。調査実施日は2016年9月12~15日であった。

3.結果および考察
 介護食に関するニーズで最も多かったカテゴリー「介護食提供者が介護食を準備する際に必要なもの」の回答数は計70件であり,具体的な記述内容として,介護食のレシピ・献立(32件),介護と食に関する情報提供(10件),介護食用の食材(7件),介護食の調理に使用する道具(5件)等がみられた。回答件数が最も多かった介護食のレシピ・献立では,家庭で簡単に作れるレシピ,地元の食材を使ったレシピ,喫食者の摂食状況に対応したレシピ等がみられた。地元の食材としてホタテを使った料理に関する高齢者の嗜好調査では,郷土料理の貝焼きみそが最も好まれていることがわかった。
平成27年度の介護保険法改正により,介護の場が施設から在宅へ移行することが推進されていることから,今後は各家庭において介護食を調理する機会が増加するものと考えられる。このため,家庭科,なかでも高等学校家庭科においては,今後,家庭でも調理できる介護食の基本を学ぶことが求められる。さらに,高齢者の嗜好調査結果から郷土料理に関する知識と調理の技術を身につけておくことが望ましいという示唆が得られた。現在,高等学校家庭科で使用されている必修教科書には,介護食についての記述はみられないが,本研究の結果および社会的なニーズから,今後は介護食に関する学習内容が掲載されることが望ましいといえる。

文献
1)早川和江,加藤陽治.(2017).介護食に関するニーズからみる家庭科教育に期待される役割―2005年度から2016年度までの介護食士養成講座受講者への意識調査結果から―.東北家庭科教育研究,16,1-5.
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© 2017 日本家庭科教育学会
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