抄録
【目的】
高等学校「家庭基礎」を学習する生徒達の食生活の自立を目指し、2015年度より導入、展開、復習で活用できる「文字かるた」の開発を行い、授業実践の結果を日本家庭科教育学会59回大会で発表した。復習として行ったかるたゲームでは97%以上の生徒が「楽しかった」と回答し、「文字かるた」は学習の理解を促し、振返り教材として有効であることを実証できたが、行動変容に向けた取組みが課題として残った。そこで、より良い食生活を実践しようとする行動につなげるために、「文字かるた」による学びがどのようなものであるかを探ることを目的とした。
【方法】
「家庭基礎」を学ぶ福岡県立の普通高校2校に依頼をし、食生活分野の学習を終えたところでかるたゲームを行い、その直後に質問紙法による事後調査を実施した。その主な内容は、かるたゲームによる知識や理解度、授業への意欲、食生活向上への意識については4件法で、文字かるたで印象に残っているもの、授業での気づきや学びについては自由記述で調査した。
A校:1年生4クラス152名、2年生4クラス145名
計297名、2016年12月に実施
B校:1年生2クラス65名、2017年1月に実施
【結果及び課題】
対象校2校の食生活分野の学習時間は、A校が60時間中18 時間、B校が62時間中30時間であった。
1 「かるたの中で印象に残っているもの」では、8割以上の生徒が44枚の中から1枚を挙ている。そのかるたを食生活の4つの基礎知識に分類し、A校とB校の比較を行った。その結果、食生活習慣に関するものが37.9%、35.3%と最も多く、その選択理由には「日頃忘れてしまうことがあったから」「一番大切なことが書かれていたから」などの記述があった。続いて、食品・食材(22.4%、20.5%)、料理・食事(13.8%、16.8%)、栄養素(6.9%、11.8%)の順で、両校間には順位の差異は見られなかった。栄養素に関するものは既存の学習内容であるにも関わらず、「初めて知った」という記述内容もみられた。生活の中での経験がこうした結果に表れ、家庭科学習に関する有用性にも影響を与えていると考えられる。さらに、選択理由の記述からは生徒達が抱える食生活の現状を垣間見ることもできた。
2 かるたゲームでどのような学びが行われたのか。B校の調査から、授業後の気づきや学びについて自由記述で回答した53名の感想を文意毎に分け、KJ法の手法によりグルーピングを行った。その結果、かるたを通して①ゲームやグループワークの楽しさ(23)、②知識の習得(21)、③理解の深まり(20)、④学習への意欲向上(6)、⑤食生活改善への意欲(4)の5つに分けられた。これらの項目を「食に関する教育-行動変容を目指した授業の検討-」(日本家庭科教育学会、2011年)で示された自己効力感の形成に注目した家庭科学習の図式にあてはめると、かるたゲームが行動変容につながる多様な学びを含んでいることが分かった。また、4件法による調査では知識の習得や理解への深まり、授業への意欲向上では男女ともに40%以上の生徒が「そう思う」と答えているのに対し、食生活改善への意欲では男女(18.4、43.3%)間に大きな差異が見られた。男子生徒の行動変容に向かう意識を高めるためには、授業でどのような学習場面を作り出していくかが今後の課題である。