抄録
【背景・目的】
家庭科教育における食生活領域指導は生涯にわたる健康維持と深く関わっており、近年の食環境の変化から一層重視される傾向にある。一方、高校では2単位科目「家庭基礎」履修校が増加し、調理実習・実験などの体験的学習に配当する時間を縮小せざるを得ず、短時間での効果的な学習指導が求められている。そこで本研究では、食生活領域の効果的な学習方法を検討するために、高等学校家庭科における調理実習指導の実態と課題を明らかにすることを目的とする。
【方法】
山形県内の公立・私立高等学校(全日制課程)の家庭科教員のうち、2016年度に共通教科「家庭」の科目において食生活領域の指導を行った教諭を対象として、質問紙調査を実施した。調査時期は2016年8月~9月である。調査内容は、調理実習の指導に関して(1)調理実習題材選定上の重視点、(2)調理実習目標の重視点、(3)調理実習指導の困難性、(4)調理実習の評価方法、(5)調理技術習得のための指導の工夫、(6)調理技術示範の方法の6点である。
【結果・考察】
2016年度に食生活領域の授業を担当した教諭40名から回答を得た。
(1)調理実習題材設定上の重視点として用意した20項目について「重視する」「やや重視する」「あまり重視しない」「重視しない」から1つ選択させた。「重視する」の回答が多かった項目は「将来活用することができる」77.5%、「日常生活への応用がしやすい」65.0%、「一人暮らしをするときに活用できる」62.5%だった。一方「重視しない」の回答が多かったのは「食に関する専門科目との連携を図る」20.0%であった。家庭に関する専門学科減少が一因と推察される。
(2)調理実習の学習目標の重視点として用意した18項目について、「主目標とした」「副目標とした」「目標としなかった」から1つを選択させた。「主目標とした」の回答が多かった項目は、「基本的な調理法や調理器具の扱いができる」83.0%、「日常の食事が作れる」82.5%であった。一方「目標としなかった」の回答が多かったのは「食事の基本的な作法、会食のマナーを身につける」30.0%、「調理の作り方や盛り付けなどに個性・創造性を発揮する」27.5%、「調理が様々な文化と関連していることを認識する」27.5%であった。
(3)調理実習の指導で難しいと思うこと20項目を設定し「そう思う」「ややそう思う」「あまりそう思わない」「思わない」から1つを選択させた。「そう思う」の回答が多かったのは「多くの生徒に対し指導をすること」「調理技術を定着させること」「時間割の制約が大きいこと」「献立作成する力を身につけさせること」の4項目であった。
(4)調理実習の評価方法を問うと「ノートまたは学習プリントの記入状況」、指定した身だしなみの準備ができたか」が多かった。一方「食物調理技術検定4級を実施する」7.5%、「実習中に調理技術に関する課題を設定する」12.5%、「4級実技程度の実技試験を行う」17.5%と調理技術の評価は少数である。多くの教諭が「日常の食事が作れる」や「基本的な調理法や調理器具の扱いができる」を目標としているが、生徒の技術評価は行われていないことが推察される。
(5)調理技術習得のための指導の工夫の観点として用意した8項目について「重視する」「やや重視する」「あまり重視しない」「重視しない」から選択させたところ、「重視する」の回答が多かったのは「示範を見せる」47.5%、「グループでの役割分担や助け合いを進める」42.5%だった。
(6)調理技術示範の方法を具体的に問うと、「実習中、必要に応じて行う」77.5%、「実習中、全員を対象に実演する」55.0%、「全く行わない」は2.5%だった。
高等学校家庭科の調理実習では「日常の食事が作れる」ことを目標とする教諭が多かったが、調理技術の評価はあまり行われておらず、目標に対して評価の方法はやや整合性に欠けることがうかがえる。調理実習の評価については今後さらに検討が必要である。