日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: P32
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第60回大会:ポスター発表
教員養成家庭科カリキュラムにおける「教科内容構成力」の育成
平成28年度岡山大学教育学部「中等家庭科内容論」「衣生活論」の実践と検討を通して
佐藤 園*篠原 陽子
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抄録

1.問題の所在と研究の目的
 今日,学校教育では,教師の「実践的指導力」が求められている。しかし,現在の教員養成では,各教科の目標に合わせて授業を計画・実施・評価する一連の授業構想・展開力等が等閑視され,教育実践を核に据えた「教科教育と教科専門を架橋する研究領域」の確立が急務となっている。岡山大学教育学部では,A「実践的な能力の育成を目指すコア・カリキュラムの実施」とB「教科及び教職に関する科目を有機的に結びつけた体系的な教育課程」の実現による実践的指導力を有する教員養成を目的として掲げた。Aに関しては,平成18年度に「実地教育」を核としたコア・カリキュラムを構築した。中学校では教科指導に必要な教科の専門的内容を扱い,「教科専門科目」を教科Ⅰ「教科の教育内容概論(内容論)」,教科Ⅱ「教科の背景となる学問概論」,教科Ⅲ「教科内容開発論」,教科Ⅳ「選択科目:高免や卒業研究に必要な科目」に区分・構造化した。Bに関しては,平成23年度から,教科内容構成の主課題を「子どもの発達段階や学習状況に応じて,教科の内容を構成し,授業を行うプロセスを総合的に教える授業内容及び方法を開発すること」とし,それを長期と短期の2つのプロセスで捉え,コア・カリキュラム全体で学べるよう授業科目を連携・統合する取組を行っている。
 家政教育講座においても,教科教育・教科内容・教育実習との関連を図る家庭科カリキュラムの構築を試み,平成22年度から実施している。本報告では,教科Ⅰ「中等家庭科内容論」および教科Ⅱ「衣生活概論」の平成28年度の実施結果および昨年度報告した平成27年度のそれとの比較から、「教科内容構成力」の育成について検討する。
2.研究の方法
①毎授業終了時に学生が記述するシャトルカードの記述内容,②大学の「授業評価アンケート」,③独自に作成した「教科内容構成力に関するアンケート」及び④学生への聞き取り調査の分析による量的・質的研究方法を用いた。
3.結果
 「中等家庭科内容論」は,1年前期に家庭生活・被服・食物・住居領域を対象とする4科目を同時開講し,同一の概要・目標・計画で実施している。授業は,全教員出席の下,「導入」と「まとめ」は家庭科教育担当の佐藤が共通で行い,各領域の分析は,以下の被服領域(担当:篠原)の例と同様に,教科専門の4名の教員が別々の授業で実施した。「導入」で,学校教育における家庭科の位置づけと中等家庭科内容論のテーマ,分析枠組みと指導要領・教科書分析方法の説明を行った後,学生は,小・中・高等学校の教科書と指導要領解説に示された衣生活学習の分析を行い,小・中・高の衣生活学習の系統性を解明した。「まとめ」では,結果の考察と今後の課題を明らかにし,アンケート調査を行い,15回の授業を終了した。その結果,学生は,短期の教科内容構成プロセスの前提となる10項目のうち家庭科の「目的・目標」「知識抽出方法」「教材研究の意義」の理解の3項目で「できるようになった」が,「教科内容構成に関する力」に関しては,「育成できたとはいえない」と評価していた。
 教科内容の篠原が担当し,「内容論」の分析結果から被服の機能,材料,着方,被服管理等について被服学から探求する「衣生活論」では,学生は「教科内容構成に関する力」の中の「教科の専門知識を持つこと」ができるようになったと評価していた。
 平成27年度の実践との比較・検討に関しては、発表当日詳細を報告したい。

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