日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: P33
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第60回大会:ポスター発表
小学校家庭科における学校放送番組活用のための手立て
初等教員養成課程大学生による指導案の傾向と課題
永田 智子*山本 亜美*村田 晋太朗
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抄録

【研究目的】学校放送の長い歴史の中で,2016年に初めて小学校家庭科を対象としたテレビ番組「カテイカ」が放送された.他教科においては学校放送番組活用に関して一定の研究蓄積があり,指導方略や活用方法が提案されているが(稲垣ほか2013,今野2016),小学校家庭科に関する実践・研究はこれからとなる.インターネット環境やタブレット端末の普及により,テレビ受像機や録画再生機がなくても学校放送番組や関連する動画クリップやデジタル教材も容易に視聴・活用できるようになった.現学習指導要領および次期学習指導要領においても「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段」を「適切に活用した学習活動の充実を図ること」や「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」が示されている.デジタル教材を含めた学校放送番組を効果的に活用するための手立てを明らかにすることは,今後の小学校家庭科教育の充実の一助となるだろう.
 研究の第一歩として,本稿では「カテイカ」がどのように授業で活用されうるか,初等教員養成課程大学生が作成した指導略案等を分析することから,傾向と課題を明らかにすることを目的とする.
【研究方法】H大学初等教員養成課程履修中の大学生・大学院生(以下,大学生)173人に,「カテイカ」第9回「これ買ってイーカ?」および番組に関連した短い動画クリップ4つを視聴させた後,消費生活領域の指導略案を作成させた.また事前アンケートや事後感想等にも回答させた.無回答項目がなかった157人分(90.8%)のデータを有効回答とし,分析した.
【研究結果】事前アンケートにおいて「小学・中学・高校生時代に,学校放送番組を使った授業を受けたことがありますか」という質問に「ある」と回答した大学生は24.2%(38人)であった.一方,「大学で,学校放送番組を使って授業づくりを考える授業を受けたことがありますか」という質問に,「ある」と回答した大学生は28.0%(44人)であった.
 指導略案において番組や動画クリップの活用しない大学生は7.6%(12人)のみであった.一方,活用する大学生は,番組のみ73.2%(115人),動画クリップのみ12.7%(20人),番組と動画クリップの組み合わせ6.4%(10人)であった.また番組を活用すると記述していた学生のうち,全シーン活用するのは47人,部分的に活用するのは75人であった.指導略案中の視聴回数は,1回51.0%(80人),2回26.8%(42人),3回8.9%(14人)の順であった.活用場面は,展開84.1%(132人),導入32.5%(51人),まとめ6.4%(10人)の順であった.活用理由として,「子供たちが興味関心を持つ」「状況がわかりやすく考えやすい」「ポイントがまとまっている」などが多く見られた.
 多くの大学生は,活用理由を意識して,展開や導入で,番組を部分的に1~2回視聴させて一斉学習として活用しようとしている傾向があることがわかった.この結果は,学校放送番組の活用経験が豊富な小学校教員に行った調査結果(高橋ら2008)と同じ傾向を示している.一方で,学校放送番組という用語や存在について認知していない大学生も多いことが明らかとなった.
【引用文献】
 稲垣忠・菅原弘一・高橋清・坂口真(2013)思考力の育成を意図した番組視聴シートにおける児童の記入行動・教師の指導方略の分析,教育メディア研究,20(1),17-27
 今野貴之(2016)1人1台タブレット端末環境における学校放送番組活用のための手立て,日本教育工学論文誌,40(Suppl.),101-104
 高橋純ほか(2008)小学校の学習単元における学校放送番組やICTの活用に関する調査,日本教育工学会研究報告集,JSET08-5,165-170

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© 2017 日本家庭科教育学会
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