日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 1-1
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2017年例会
小学校家庭科「快適な被服と住まい」領域における「すずしい暮らし方・暖かな暮らし方」に関する研究
その1 住まい
千森 督子
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抄録

【目的】
 小学校の家庭科では、「快適な被服と住まい」の領域において、「すずしい暮らし方・暖かな暮らし方」の単元がある。その中でも自然の力を上手に活かし、エネルギーを節約できる暮らし方として、昔の暮らしが取りあげられている。住まいの分野では、「すずしい暮らし方」として、「軒や庇を長く伸ばす民家の造り」や「植栽で日よけとする」、「開口部を開けて風通しをよくする」、「風を通す簾や葦簀の利用」、「団扇で扇ぐ」、「打ち水をする」等があげられている。一方、「暖かな暮らし方」では、「室内へ効果的に日光を取り込む」、「室内の暖かさを逃がさないように工夫する」、「開口部を閉める」等があげられている。
 本研究は、小学生では生活の主体者とはなり得ていないために、小学校でこれらの単元を学んでから10年程経て生活力が身に付いている大学生がどの程度昔の暮らしを記憶、理解しているのか、実生活ではどのように工夫し、どのような方法を用いて「すずしい暮らし方・暖かな暮らし方」を実践しているのかを明らかにし、今後の家庭科教育に資することを目的とする。

【方法】
 質問紙法による自由記述方式(複数回答可能)の調査結果から検討する。対象者は、生活学を専門に学ぶ、本学の生活文化学科生活文化専攻生52名で、回収率は80.8%である。

【結果】
 「すずしい暮らし方」に関する、昔の暮らしであげられた58回答の中で最多が「打ち水」(20)である。次いで、「簾・葦簀を用いる」(11)、「窓を開ける・風通しをよくする」(7)、「風鈴を付ける」(4)、「団扇で扇ぐ」(3)、「植栽で日よけとする」(2)である。 
 実生活での工夫・実行に関しては70回答あり、その内、「窓を開ける・風通しをよくする」(21)が最も多く、次いで、「クーラーを使う」(18)であり、この二つで過半数を占める。その他として、「扇風機を使う」(7)、「カーテンを閉める・日差しがあたらないようにする」(4)、「打ち水をする」(3)、「簾・葦簀を用いる」(2)があげられている。少数ではあるが、「風鈴を付ける」(1)、「団扇で扇ぐ」(1)もみられる。
 そのために、「すずしい暮らし方」に関しては、実生活でも昔の暮らしが継承されており、とりわけ暮らし方の基本である「窓を開ける・風通しをよくする」が「クーラーを使う」よりも実行されていることがわかった。
 「暖かな暮らし方」での昔の暮らしに関しては31回答あり、その中で「火をおこす」(16)が過半数を占め、ついで、「囲炉裏で薪をくべる」(5)、「湯たんぽを使う」(3)、「開口部を閉める・隙間をつめる」(3)である。少数ではあるが、「炬燵」(1)、「火鉢」(1)もあげられている。
 実生活での工夫・実行に関しては64の回答があり、「炬燵」(15)が最多であるが、「暖房(エアコン)をする」(14)も多く、この二つで半数近くを占める。次いで、「布団・毛布をかける」(9)、「湯たんぽ」(5)、「床暖房」(3)、「ホットカーペット」(2)、「ストーブ」(2)である。
 そのために、現在では直接的な火を用いる方法は減少しているが、「炬燵」が現代的な「エアコン」を上回り、昔の暮らしが継承されていることがわかる。また、近年、復活の兆しがみられるのが「湯たんぽ」である。
 以上の結果より、昔の暮らしに関する学生の記憶や理解の一端が掌握され、「すずしい暮らし方」、「暖かな暮らし方」共に、昔の暮らしが一部ではあるが若い世代にも継承され、現代的な対応策と混在して用いられていることが明らかになった。

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