日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 2-2
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2017年例会
中学校家庭科「家庭生活」におけるロールプレイングを方法とした実践研究に関する現状と課題
村田 晋太朗*永田 智子
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抄録

目的

平成29年3月に告示された学習指導要領では,育成すべき資質・能力を「何を理解しているか,何ができるか」「理解していること・できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」の3つの柱として整理た.加えて,各教科においても構造的に学習指導要領上にて,この3つの柱を示している.

これまでの学習指導要領で示されていた指導内容や指導方法だけでなく,これからは先述の通り「資質・能力」を含めた一体的な実践を推し進めていかなければならない.来年度からは5教科よりも一年早く移行期間に入っていくわけだが,これまでの実践を振り返りつつ,新たな学習指導要領へと対応できるだけの学術的な知見は揃っていない現状である.そのため,現場の家庭科教員たちは,差し迫っている学習指導要領改訂への対応は遅れてしまうのではないだろうか.

中学校家庭科の学習内容でも指導の難しさが指摘されているのは,「家庭生活」である.平成元年学習指導要領改訂から新設されたこの内容は,他の内容と比べて歴史も浅く,社会の変化に伴い生活や家族形態が多様化していることへの対応を求められる.また,人との関わりを学習するため,指導の困難さを抱えている.来年度からの学習指導要領の移行に向けて,これまでの実践を整理し,現状や課題を把握し,新たな実践の提案を明示していくことは急務である.

そこで本研究では,これまでの「家庭生活」において中心的な方法論である「ロールプレイング」に着目し,実践研究を整理し,現状と課題を明らかにし,学習指導要領の移行に向けての基礎資料を得ることを目的とする.

方法

論文検索サイト「CiNii Articles」において,「ロールプレイング 家庭科」「ロールプレイング 家庭」「ローレプレイン 家庭科」「ローレプレイ 家庭」をキーワードとし,検索をかけた.検索結果から,研究発表などの要旨を除く論文(学術雑誌掲載のもの,大学の研究紀要,雑誌に掲載されている実践論文の3種類)を抽出した.

抽出した各論文を「実践の目的(育成すべき資質・能力)」「ロールプレイングを行う文脈」「学習内容(何を学ぶのか)」「ローレプレイングの手続き(どのように学ぶのか)」「ロールプレイングによる成果(何が身についたか)」などの新学習指導要領で示された理念に基づき分類する.分類された資料を基に,ローレプレイングを方法論とした実践および実践研究の現状と課題を検討する.

結果

論文検索サイトを用いた結果,20本の論文を抽出した.実践研究は,家族との関わりに着目したものが最も多く16本,高齢者のなど福祉をテーマにしたものが4本,地域の人との関わりについては2本,消費や保育についてはそれぞれ1本であった.ロールプレイングは主に「家族関係」をテーマに実践されていることがわかる.

ロールプレイングの手法としては,「即興で行う演技」もしくは個人やグループで「シナリオを考えて実演する」二つのものがあった.

ロールプレイングを行う文脈は,生活場面で実際に起こりうる状況を想定しているものが多かった.例えば,「手伝いをしない娘と母親のやりとり」「親から子への買い物の依頼場面」「携帯電話料金が約束よりも超過したとき」などがある.ロールプレイングで扱う場面は,複雑なやりとりが必要なものが多く,また問題解決的な場面を想定していることが多いことが明らかとなった.

今後の課題は,資質・能力や指導・評価を一体的に捉えた実践の開発と効果の検証である.

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