日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 3-2
会議情報

2017年例会
学びの共有を目指した授業デザインの検討
調理実習におけるウェアラブルカメラの活用
有友 愛子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
 学びを共有するツールとしてタブレットPC上で活用するデジタルポートフォリオを活用した取り組みを進めてきた。調理実習では、レシピカードと調理場面の動画を合わせた活用の有用性(2012)や生徒の思考を深化・拡大させることを意図したアクティブ・ラーニングを志向した授業展開と思考を可視化するツールとしての動画の活用を組み合わせが効果的であることを報告している(2015,2016)。そこで、より生徒の主体的な活動を促し、家庭科の見方や考え方を成長させ学びを深めることを目指して、ウェアラブルカメラで撮影した生徒の目線から見た調理場面の動画を用いた授業デザインとその効果について検討することにした。
【方法】
 調理実習のふり返りの学習場面において家族への食事作りを目指したレシピカードの作成に取り組む際、ウェアラブルカメラで撮影した生徒の目線から見た調理場面の動画をタブレットPC上で視聴させ、自分自身の調理操作をふり返ったり、友だちと共有し合ったりする活動を取り入れた。レシピカードとは、調理方法をタブレットPCのノートアプリケーション(Metamoji Note)で作成した調理方法を示したものである(2012)。直接体験をことばと関連させてまとめる活動により、思考力や判断力の向上、学習したことを生活に生かす力を身につけるための有効な手段として調理実習のふり返りの学習場面でレシピカードの作成に取り組ませている。レシピカードの記述内容、レポートや質問紙調査による自己評価や家族からの評価、聞き取り調査の結果を分析し検討を行った。
【結果】
 主菜一品の調理実習と家族への食事作りの際の五件法による自己評価を比較したところ、特に調理手順についての自己評価の高まりが見られた。また、家族への食事作りに向けたレシピカード作りの際、ウェアラブルカメラで撮影した生徒の目線から見た調理動画を活用したことによる生徒の自己評価への関連性について、ウェアラブルカメラで撮影した調理動画を活用しなかった際の自己評価の変化を比較した。その結果、どちらの年度においても、調理手順についての自己評価の高まりがみられた。レシピカードの作成に友達からのアドバイスが生かされたかについて聞き取り調査を行ったところ、「調理実習をしている時や自分一人で動画を視聴しただけでは気付かなかった点を友達にアドバイスしてもらえ、レシピカード作りに役立てることができた」という意見が多く見られた。特に、調理実習の際、手順に沿って調理を進め、食材の調理上の変化に注目した調理が苦手である生徒のレシピカードには、食材の調理上の変化の見方についての記述が増えていた。ウェアラブルカメラで撮影した生徒の目線から見た動画の活用により生徒の主体的な学習活動における言語活動が充実し、学習の理解にもつなげられたことがうかがえた。家族への食事作りのふり返りの学習場面で下級生に紹介したいポイントムービーの作成を通して食材の調理上の変化に着目しようとする意識を高めることができたかという観点で質問紙調査を行ったところ、自己評価の五件法による結果は3.64であった。「この勉強をしてからお母さんが調理している時の見る目が変わりました。例えば、しょうがを入れていたら、肉をやわらかくしているんだと理由を考えるようになりました。もっと料理をしてみたいと思うようになりました」等、食材の調理上の変化について再確認し今後の調理に生かそうする姿勢が見られるものがあげられていた。ウェアラブルカメラで撮影した生徒の目線から見た調理場面の動画を用いたレシピカードの作成等の学習場面を設定することで、生徒の主体的な活動が促され、生活の営みに係る家庭科の見方や考え方を働かせることにつながっている様子がうかがえた。
本研究はJSPS科研費 JP16H00257の助成を受けて取り組んだ成果の一部である。
著者関連情報
© 2017 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top