日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 4-4
会議情報

2017年例会
高校生の認識・実態に基づいた地域社会への参画を促す家庭科学習課題の開発
前田 まどか*永田 智子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【研究の背景と目的】公職選挙法の改正により選挙年齢が18歳に引き下げられ,高校生が社会の活動主体として学習・活動できる場が求められている。高校家庭科でも地域社会への参画を促す資質・能力の育成が求められている。しかし,内閣府の調査では,子ども・若者の地域におけるつながりが全体的に希薄で,地域活動やボランティアに消極的であることが示されている(平成28年度)。地域社会への主体的な参画を促すには,高校生の実態と欲求に基づいた実践的な学習課題にする必要がある。本研究では,地域社会への参画を社会の他者と関係を構築し協働することと捉え,これを促す高校家庭科の学習内容として「社会的自立」に着目した。家庭科では「社会的自立」のみならずさまざまな自立の側面から,社会的発達の全体像認識を示している。先行研究(大石2008)では,大学生の自立を支援する自立尺度が示されている。これらは,高校家庭科教育で扱う「生活的自立」・「心理的自立」・「経済的自立」・「社会的自立」の4側面と対応しているといえる。本研究では,高校生の自立能力の認識や生活の実態,地域社会に対する認識やつながりを調べる。その上で,高校生の実態・構造を4側面から捉え,高校家庭科における地域社会への参画を促す学習課題の考察を試みた。

【研究方法】2017年5月に兵庫県立I高等学校の1学年5クラスを対象に,次の2つの質問紙調査を実施した。1.高校生の自立能力の認識に関する質問紙調査,2.高校生の地域社会に対する認識,つながりの実態等に関する質問紙調査。1の調査は,大学生を対象として作成された自立尺度(大石2008)を参考にした。高校生の発達段階をふまえ,「経済的自立」の質問項目を一部改変し,他者と関係を構築し協働する能力を問う質問を追加した。能力の有無等を5件法で自己評価させ,因子分析を行った。2の調査では,高校生が捉える地域社会の“領域”・“集団”・“活動”等を調べ,合せて地域社会への参画を促す学習課題を検討した。

【結果および考察】自立能力は,最尤法,プロマックス回転解法による因子分析を行い,解釈可能な五つの因子が抽出された。そのうち四つの因子は,「生活的自立」・「心理的自立」・「社会的自立」に対応する。「心理的自立」に対応する因子は,意識を向ける方向が“自己”と“他者”に関する二つの因子に大別された。“他者”の理解を深め対人関係を築く「心理的自立(対人関係)」は,他者との関係構築を促す「社会的自立」につながる架橋的特性を持っているといえる。五つ目の因子は,複数の側面が関連する自立に「経済的自立」1項目のみ含んでいた。各因子の平均値が最も高いのは「心理的自立(対人関係)」で,最も低いのは「社会的自立」の因子であった。この結果を基に,自立の下位尺度に対する行動意欲について,各因子の平均値を確認した。結果は,能力と同様に「心理的自立(対人関係)」が最も高く,この能力を生かして「社会的自立」を図ることは,行動意欲に基づいて得意な能力を生かせる点において,有効ではないかと推察された。対象の高校生が協力関係を実感できるのは,家族(家庭)やクラスメート(学級)までで,全校生徒(学校)や市民 (市町村)では協力関係を実感していないことが明らかになった。これより,市民(市町村)まで広げて協力関係構築を探究させるのは難しいことが分かった。また,高校生が地域の役割を担う場面は,清掃活動やボランティアに偏っており,自分の行動で地域社会を変えられると考える高校生は少数であった。以上より,地域社会への参画を促す学習課題は,“他者”理解を通じて関係構築を探究することであると考えられる。また,実践的な学習を成立させるために,用いる題材は生徒が活動主体となる学校生活の場において,地域住民まで協力関係を広げられる教育内容が適していることが示唆された。
著者関連情報
© 2017 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top