日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: A4-5
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家庭科における探究・発信型学習
主体的に生活をとらえ学び合う生活レポートの実践
*和田 早苗栗原 恵美子
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抄録

〈研究の目的〉
 「生活レポート」は家庭科の探究・発信型の学習実践で、小学校から大学での家庭科関連の授業の中で実施されている。小学生から大学生に至るまで基本的な進め方は同じで、各自が身の回りの生活の中で知りたいことなどから課題を見つけ、様々な調査方法を用いて調べ、用紙一枚にまとめ、発表し質疑応答を行うものである。主体的に生活をとらえ、課題を探究し、発信・共有する学習は、次期中学校学習指導要領の技術・家庭の3つの目標に関わり、特に「生活や社会の中から問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、実践を評価・改善し、表現するなど、課題を解決する力を養う」ことに深く結びつく学習であろう。本研究では、中学校において実践してきた生活レポートの記録をもとに生徒の興味・関心のある内容について分析し、学習後に行ったアンケート調査を検討することで生活レポートを実施した成果を明らかにすることを目的とした。先行研究として、「家庭科における個をいかす学習の一方法―『生活レポート』に見られる子どもの関心―」(流田 1993)がある。
〈方法〉
1国立大学附属中学校第1学年3クラスにて2004年~2016年度に実施した生活レポート(n=1,456)の内容を分類し検討した。分類項目は次期中学校学習指導要領の家庭分野の内容および先行研究の領域区分を参考にして「家族・家庭」「衣生活」「食生活」「住生活」「消費生活」「環境」を設定し、発表内容として多く挙がるテーマの「行事」「睡眠」「病気」を項目として独立させた。複数項目の要素を含んでいるものは「総合」とした。また、参考文献に挙げられた資料の種類についても分析を行った。
2(1)学習後の1年生に、生活レポートがきっかけとなり、興味・関心を持つようになったことの有無について調査し、生活レポートを通してためになったこと、および感想を自由記述形式で尋ねた。(2017年3月実施、n=101)
 (2)2年前に生活レポート学習を行った3年生を対象として、1年生で実施した生活レポートを通してためになったこと、および感想を自由記述形式で尋ねた。(2017年3月実施、n=107)
〈結果〉
・対象とした全ての年で「食生活」の内容が最も多く、生徒達の食への関心の高さが示された。
・調査を始めた頃よりも増加している内容として「住生活」「睡眠」が挙げられる。住生活では収納術や片づけに関するテーマが多くみられた。世間で話題になっていることは子ども達も気になっていることが示された。
・「総合」に分類される内容も多く、生活を総合的にとらえていることが垣間見られた。
・参考文献に書籍(教科書も含む)のみを用いる数は減り、インターネット+書籍など種類の異なる資料を扱うケースが増えていた。
・1年生の3月に実施した調査では、生活レポートがきっかけとなり興味・関心を持つようになったことが「ある」と答えた生徒は65.3%、「どちらともいえない」27.7%、「ない」6.9%であった。
・3年生の3月に実施した調査では、「家事等日常の生活(掃除とか料理とか気軽にできること)で自分のレポートの事、他の人の発表で知ったことを生かせた。」「家庭科と一言に言っても、本当にたくさんの分野があって一人一人の発表が生活に役立つものでした。まとめるのは大変でしたが、知識を増やせたのでよかったです。」などの記述がみられた。
 生活レポートを通して、身の回りの様々な内容について楽しく学び合うことが、生活の中で実践してみようというきっかけとなったこと、主体的に課題を探究し、分かりやすくまとめて伝える力を培うことにもつながっていたことが示唆された。

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