日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: B1-3
会議情報

高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境について
『家庭科部会報』における実践記録の分析を通して
*計良 智子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
目的
本研究は、高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境を実践事例や実践記録に基づいて明らかにするものである。

家庭科教師にとって、どのようにして専門性発達が促されているかは重要な課題である。この専門性発達の調査研究に、実践コミュニティが家庭科教師の成長にどのような役割を果たしたのか、そして、戦後の教育改革で誕生し成立した教科の変遷に家庭科教師たちはどのように関わってきたのかを考察した小高さほみ(2010)『教師の成長と実践コミュニティ』がある。また、教師の職能成長プロセスに焦点をあて、9名の家庭科教師のライフヒストリーを通して、個々の教師が考える「よい授業」がどのような生活体験や教師経験から培われてきたかを読み解いた河村美穂らの(2017)『9つのライフヒストリーにみる家庭科教師のくらしとキャリア』もある。しかし、小高(2010)や河村ら(2017)は、校長をはじめとして学校全体が家庭科教育にどのように関わったか、更に地域との関わりから見た家庭科教師の専門性発達はいかなるものかについては明らかにしていない。教師の成長・発展は、教育実践とその振り返りを通して促されるものであることを考えると、校長や同僚、地域などから見た家庭科教師の専門性発達についての教育実践を分析することは欠かせない。


方法
教師の「専門性」および「専門性発達」を構成する概念は数多くある。その中で本研究では、久冨義之(2008)にならって、教師の「専門性」を「ある職業やその仕事内容の専門的性格」と定義する。また「専門性発達」は、今津孝次郎(2008)にならって、「『経験の省察』が可能な態度・技能を獲得し, 省察の結果として新たな知識を生み出し続けること」と定義する。

こうした先行研究の知見にもとづき、全国高等学校長協会家庭部会報を主な資料として高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境を分析・考察した。


結果
全国高等学校長協会家庭部会報に記載されている内容をもとに,

高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境を明らかにすると以下の知見が得られた。

事例1 校長および家庭科教師の意識からわかる家庭科教師の「専門性」(第124号)

 校長が家庭科教育に最も期待することと家庭科教師が家庭科教育で最も重要だと考えることは、「衣食住に係る実践力」で一致していた。2番目から4番目の「消費者教育」「食育の推進」「子育て教育」は、順番は異なるが同じ項目が選択された。

事例2 地域連携型の家庭科教育と教師の専門性発達(第130号)

 スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール事業の取組として、1年目は「基礎力」、2年目は「思考力」の習得を中心に研究を行い、3年目は「実践力」の習得を中心にと段階的に積み上げ、様々な活動を実践し地域から海外へと発信している。この事業は家庭科教師が中心となり地域の行政と産業界、地域で活躍している卒業生と連携し推進する中で、教職員全員が協働し、地域との連携を一層深め、学校の活性化につなぐという成果があった。

 これらのことから、校長と家庭科教員の意識はほぼ一致して「衣食住に係る実践力」「消費者教育」「食育」「子育て教育」であることがわかった。また地域連携型の実践が教師の専門性発達に大きく関わっており、1年目は「基礎力」、2年目は「思考力」、3年目は「実践力」の習得を中心に実践へと段階的に積み上げていくことで、教師自身の研究力と実践力が飛躍的に向上し、専門性発達を促していることがわかった。専門性発達を促す環境として、学校内の人的資源だけでなく、地域の行政、産業界、地域で活躍している卒業生の存在が明らかになった。

 高校家庭科教師の専門性発達とそれを促す環境は、学校関係者だけでなく、地域行政、地域の産業、そして海外へと視点を広げる必要がある。
著者関連情報
© 2018 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top