日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: B1-2
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高等学校家庭科初任者が抱える教科指導上の不安感
関東3県の初任者への質問紙調査から
*高橋 菜月池崎 喜美惠
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抄録
〈背景・目的〉団塊の世代の大量退職時代を迎え、新規採用教員の大量採用が進んでいる。初任者育成は重要かつ急務である。一方、「生きる力の更なる充実を目指した家庭科教育への提案」(2017)において、高等学校家庭科教員は、学んできた専門領域により指導分野に「得手」「不得手」が生じていることが示された。また、高等学校家庭科教員の配属校は、専門学科設置校や家庭科担当1人配置校等様々である。初任者も配属校で1人の家庭科教員として適応し指導することが求められ、それに伴い多様な不安感を抱えていることが予想される。本研究では、初任者への支援策を検討する前段階として、高等学校家庭科初任者が抱える教科指導上の不安感を具体的に明らかにすることを目的とする。
〈方法〉関東3県の高等学校家庭科初任者27名を対象に、各県の高等学校家庭科初任者研修会及び郵送にて質問紙調査を2017年8月~9月及び2018年1月~2月の2回実施した。質問内容は「属性」「学校業務全体の不安感(20項目)」「教科指導の際に抱く不安感(39項目)」自由記述にて「不安を抱いている分野とその理由」「1年間を振り返って教科指導に自信がついたか」等である。なお、自由記述の分析の枠組みにはSteps for Coding and Theorization(SCAT)を用いた。
〈結果・考察〉指導経験による不安感の相違について分析した結果、「学校業務全体の不安感(20項目)」のうち「教科指導」のみ回答率に有意差があり、第2回目の方が第1回目と比較し低かった。一方、「教科指導の際に抱く不安感(39項目)」の合計得点の比較において有意差はみられず、各項目の比較において「新しい指導方法を取り入れる」の項目のみ有意差がみられ、第2回目の方が低かった。また、「講師経験」の有無と不安感得点を比較した結果、「アレルギーの子どもに配慮した授業」「アレルギーが発症した場合の対応」「危険を予想して授業」「調理実習において実演」「年間計画通りに授業を実施」「家庭生活に生かすような手立て」「体験活動の際地域との連携」の7項目において有意差がみられ、講師経験「なし」の方が高かった。以上から、第1回、第2回間の約半年の指導経験では教科指導上の不安感に与える影響は少なく、講師経験等1年以上の指導経験は不安感を軽減させうることが示唆された。特に講師経験の有無により差があった「アレルギー」に関する内容や「危険を予想して授業」をおこなうことは、生徒の安全に関わる重要事項である。初任者が事前に知識を身につけることで、不安感を軽減させる可能性が推察された。また、「不安を抱いている分野とその理由」(複数回答可)の回答率は「衣」58.3%、「食」29.2%、「住」16.7%、「消費」20.8%、「家庭経済」25.0%、「保育」16.7%、「家族」20.8%、「高齢者」29.2%であった。自由記述から最も多くの分野において【指導内容・指導方法に対する困難】がみられ、次に【知識不足による不安】及び【自身の専門外分野を指導する不安】が多くみられた。続いて【自身の能力と求められる専門性とのギャップ】等を抱えていることが明らかとなった。他の質問回答からも初任者が不安感を抱く原因として、高等学校家庭科の授業に求められる専門性と自身の知識・技術等とのギャップが生じていることが推察された。さらに、「1年間を振り返って教科指導に自信がついたか」の質問に対し「自信がついた」群(37.5%)は【周囲との関係が良好】【授業の土台づくり・先の見通し】【自己成長を実感】、「なんともいえない」の回答者(45.8%)は【成功体験の少なさ】【自己評価の結果】【組織に対する批判】、「少し不安がある」の回答者(12.5%)は【来年度の見通しがつかない】【良い授業の基準がわからない】をそれぞれの理由として挙げていた。
 今後、より詳細に教科指導上の不安感を明らかにし、初任者教員への支援策の1つとして初任者教員向けのガイドブック等の作成を検討している。
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© 2018 日本家庭科教育学会
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