日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: P04
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岡山大学教育学部家政教育講座における初等家庭科授業研究・内容研究の実践と「教科内容構成力」の育成
小学校教員養成における教科教育と教科内容の統合を目指す授業内容構築の試み
*佐藤 園篠原 陽子
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抄録

1.問題の所在と研究の目的

 今日,学校教育では,教師の「実践的指導力」が求められている。しかし,現在の教員養成では,各教科の目標に合わせて授業を計画・実施・評価する一連の授業構想・展開力等が等閑視され,教育実践を核に据えた「教科教育と教科専門を架橋する研究領域」の確立が課題となっている。この課題に対し、岡山大学教育学部では,A「実践的な能力の育成を目指すコア・カリキュラムの実施」とB「教科及び教職に関する科目を有機的に結びつけた体系的な教育課程」の実現による実践的指導力を有する教員養成を目的として掲げた。

 Aに関しては,平成18年度に「実地教育」を核としたコア・カリキュラムを構築した。この中で、小学校教員養成では「在り方懇」の指摘を踏まえ、小学校における教科専門に必要となる教科の専門的な内容のみを取り扱うこととされた。具体的には、「小学校学習指導要領に規定されている教科の指導・学習内容を概観し、構造的に整理するとともに、その教科内容を指導する際に必要な知識や理論、技術や実験などの技能の基礎基本について指導する」科目として、教科内容研究の再編が求められた。

 Bに関しては,平成23年度から,教科内容構成の主課題を「子どもの発達段階や学習状況に応じて,教科の内容を構成し,授業を行うプロセスを総合的に教える授業内容及び方法を開発すること」とし,それを長期と短期の2つのプロセスで捉え,コア・カリキュラム全体で学べるよう授業科目を連携・統合する取組を行っている。

 この中で,家政教育講座においても,教科教育・教科内容・教育実習の関連を図る家庭科カリキュラムの構築を試み、平成22年度から実施してきた。本報告では,その中で、教科教育と教科内容の統合を目指して授業内容を構築・実施している「初等家庭科授業研究」と「初等家庭科内容研究」の平成26・27・28年度の実施結果から、「教科内容構成力」の育成について検討したい。

2.研究の方法

 (1)毎授業終了時に学生が記述するシャトルカードの記述内容,(2)独自に作成した「教科内容構成力に関するアンケート」の分析による量的・質的研究方法を用いた。(2)は「長期の教科内容構成プロセスの前提となる力10項目」「教科内容構成の力9項目」「新しい授業を作る意欲」「教職志望の程度」に対して5件法で回答させる構成となっている。調査は,授業研究と内容研究の合計30回の終了時に行い、その場で回収した。

3.授業の概要

 初等家庭科授業研究と内容研究は、小学校教育コース2年次生を対象に、教科教育の教員による授業研究と、教科教育・教科内容の教員がTT体制で指導する内容研究により、長期の教科内容構成力を育成するように計画している。授業研究では、家庭科の目的と内容・授業構成理論を講義し、内容研究では、小学校家庭科の現行学習指導要領と教科書を学生が分析し、その問題の解決を教科内容学と教科教育学から探求していく内容となっている。

 4.受講生に行った「教科内容構成の力」に関するアンケート調査の結果

 受講生に行ったアンケート調査の結果、平成26~28年度共に「長期の教科内容構成プロセスの前提となる力」に関しては、10項目共に「伸びた」と評価していた。しかし、「教科内容構成の力9項目」の評価に関しては、平成26・27年度と平成28年度では差がみられ、それは、学生の「教職志望の程度」に起因していると考えられた。調査の詳細な分析結果等は、当日、報告したい。

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