日本家政学会誌
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高リン食摂取, または高食塩食摂取が小腸アルカリホスファターゼ活性に及ぼす影響について
曽我部 夏子丸山 里枝子五関-曽根 正江
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2006 年 57 巻 11 号 p. 737-742

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抄録

アルカリホスファターゼ (ALP) は, アルカリ性 (pH8-10) に至適pHを持つ亜鉛含有酵素で, リン酸エステルを無機リン酸とアルコールに加水分解する反応を触媒する. 小腸アルカリホスファターゼ (ALP) は, 小腸刷子縁膜に高濃度に存在し, 小腸内の無機リン酸の取り込みに深く関与していると考えられているが, 未だ不明な点が多い. 近年の食生活において, リンや食塩の過剰摂取が問題となってきている. そこで, 本研究では, 高リン食摂取, または高食塩食摂取が小腸ALP活性に及ぼす影響について検討を行った. 6週齢SD系雌ラット (33匹) を, AIN-93Mを与えるコントロール群, 飼料重量の1.0%および1.5%のリンを含む飼料を与える高リン食群 (P1.0%およびP1.5%), さらに1.0%の塩化ナトリウムを含む高食塩食群の4群に分けた. 実験食投与開始から56日後に十二指腸, 空腸, 回腸に分けて採取し, それぞれの部位でALP比活性を比較した. 高リン食群 (P1.0%およびP1.5%) では, 小腸ALP比活性において, コントロール群と比べ有意な差は認められなかった. 一方, 興味深いことに, 高食塩食群ではコントロール群に比べ, 十二指腸および空腸で, それぞれ有意な低値を示した (p <0.05, p <0.01). 今回の結果から, 高食塩食摂取が小腸ALPの活性を低下させる作用があることが示唆された. 今後, さらに小腸ALP活性調節メカニズムについて検討を重ねることによって, 小腸ALPの生理的機能の解明に役立つ証拠が得られるであろう.

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© 2006 一般社団法人 日本家政学会
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