2020 年 71 巻 3 号 p. 135-145
ダイコンを試料として, 真空包装が細胞膜の半透性へ及ぼす影響を実験的に明らかにするとともに, 真空包装直後とその後の加熱に分けて, 調味に及ぼす影響を検討した. 真空包装直後および3日間包装後の試料を0.5%NaCl水溶液に浸漬したところ試料中の食塩濃度が増加しなかったことから, 真空包装を行っても細胞膜の半透性は消失しないことが示唆された. 次にダイコンを1.5%および6%NaCl水溶液, 17.5%ショ糖水溶液とともに真空包装し, 包装直後と加熱後に分けて調味料濃度を測定したところ, いずれも包装直後は常圧下で包装した対照試料に比較して有意に高くなり, 加熱後は細胞膜の半透性が消失するため調味料の拡散が起こり, 調味料濃度は高くなる傾向にあった. 6%NaCl水溶液では液量が少量でも, 加熱後の試料は適度な食塩濃度に仕上がった. 本研究により, 加熱しない場合は真空包装処理時に起こる圧力勾配により調味液が食材へ浸入することで効率よく調味でき, 加熱する場合は高濃度で少量の調味液を用いることで適度な濃度に調味できることが示唆された.