日本家政学会誌
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資料
母子健康手帳における特徴を生かした教育現場での活用の可能性
―家庭科保育学習を中心に―
吉山 怜花吉川 はる奈
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2020 年 71 巻 3 号 p. 155-162

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抄録

 日本には60年以上前に開発され, 妊娠に際してすべての妊産婦に発行されている母子健康手帳がある. すべての妊産婦が持っている子育て情報が掲載された優れたツールであるが, 教育の場ではあまり注目されていない. 本研究では母子健康手帳の子育て情報源としての機能や扱われ方を調査, 整理することで, 教育的に活用する可能性を検討した. 手帳の内容は「記録」と「ガイドブック」の2つの機能に分類できた. 定期健診や予防接種などを記す「記録」としての機能は, よく知られ, 活用されている機能であったが, 子育て情報が載っているという「ガイドブック」として機能は, ほとんど活用されておらず, 紹介も十分されていなかった. 「記録」としての機能は, 生活する子どもの姿を想像できることに価値があり, 授業時に生徒が将来の自分を想像するきっかけにもなり得る資料の一つではないかと考えられた. ただし「記録」部分には個人情報が記載されているので, 扱う際は十分な配慮が必要であった. 一方で, 「ガイドブック」としての機能は, 新しい保育分野の情報や保育学習における具体的資料教材としての価値があるのではないかと考えられた. 母子健康手帳の存在を伝えるだけでなく, 「ガイドブック」としての知識の豊富さを活かして, 活用していくことも可能だと考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本家政学会
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