2021 年 72 巻 3 号 p. 152-161
女子大生を対象に味の識別能力を官能評価によって調べ, 甘味に対する嗜好との関連を検討した. 甘味と塩味に対する識別能を測定するために, 異なる濃度のショ糖溶液と食塩溶液を用いた. 異なる砂糖濃度のオレンジゼリーと伊達巻を用いて, 甘味の識別能と嗜好性を調べた. その結果, 標準液の濃度差識別正答者は, 伊達巻の濃度差識別能が高かった. また, オレンジゼリーの濃度差識別正答者は, 伊達巻でも濃度差識別能が高かった. オレンジゼリーの甘味の濃い方を好む者は, 薄い方を好む者に比べてオレンジゼリーの濃度差識別能が高かった. 甘味への認識との関連をみると, 家族に甘いもの好きが多い者には, オレンジゼリーの甘味の濃い方を好む者が多かった. しかし, 甘党であるという自身の認識と官能評価による甘味に対する濃度差識別能には関連がなかった. このことから, 甘党の人は甘いものへの嗜好性は高いが, 必ずしも甘味に対する濃度差識別能に優れているわけではないことが示唆された.