日本家政学会誌
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学校における「家庭の掃除」に関する教育の歴史的変遷
―高等女学校家事科検定教科書を資料として―
表 真美
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2021 年 72 巻 5 号 p. 260-271

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抄録

 明治期から昭和戦前期の学校における「家庭の掃除」に関する教育の内容を明らかにするために, 高等女学校家事科検定教科書を分析資料として記述を抽出, 10項目の分析軸を用いて分析し, 『主婦之友』の雑誌記事を補助資料として考察した. その結果, 以下の5点が明らかになった.

 1) 49種中47種の教科書から掃除に関する記述が抽出された. 多くの教科書は上巻の「住居」の章に掃除についての節が含まれていた.

 2) 毎日の掃除に加え, 曜日を決めて重点的に掃除を行う週掃除, また, 月掃除, 春秋の大掃除を行うことが記され, 毎日の掃除は, 払い掃除, 掃き掃除, 拭き掃除, 洗い掃除について掃除の仕方が説明されていた.

 3) 大正期以降, 柄付雑巾や電気掃除機が労力を減らし, 効果的に掃除ができる道具として推奨されていた.

 4) 誰が掃除をするかについては, 明治期は使用人の記述があったが, 大正期には「主婦」「婦人」が多く見られ, 昭和期にはその記述が減少した.

 5) 掃除は住居の保存上また衛生上重要であることが多くの教科書に記されていた. また, 大正中期以降, 特に昭和期には, 掃除は精神上重要との記述が複数見られた.

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© 2021 一般社団法人 日本家政学会
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