日本家政学会誌
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家庭科におけるシティズンシップ教育実践の学習内容と学習方法の提案
―高等学校における地域生活を創り出す実践事例の分析を通して―
土岐 圭佑
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2021 年 72 巻 5 号 p. 272-283

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抄録

 本研究は, 家庭科において重視すべきシティズンシップ教育について, どのような学習内容や学習方法が適切かの示唆を得るために, 高等学校における地域生活を創り出す実践事例である「計根別食育学校」を分析し, 家庭科実践の展開過程に必要な視点を提案することを目的とした.

 研究の結果, 地域生活を創り出す実践では, 何らかの地域生活に関する課題意識などが子どもや教師, 地域住民等と共有され, それらを解決するために, 実践コミュニティを基盤にして, どのような活動に取り組むのか構想し実践することが学習内容となることがわかった. また, この学習内容に取り組むためには, 実践コミュニティの構成員間で水平的関係が志向され, 非決定空間において構成員が自由に提案し, 新たな自己の規範や価値観の発見・再構成につながる対話を重視する学習方法が採られていることもわかった.

 上記の結果から, 家庭科におけるシティズンシップ教育実践では, 授業の構成員間で解放的機能をもつ実践コミュニティが構築され, 課題解決のための活動を構想し実践すること, 構成員が各々の生活現実や課題解決のための考え等を語り合う対話を通して協働の質を高めること, 実践コミュニティを媒介とすることで生徒のシティズンシップ形成と地域生活の変容・発展を切り離さずに捉えることの可能性が示唆された.

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© 2021 一般社団法人 日本家政学会
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