日本家政学会誌
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納豆中の2,5-ジメチルピラジンと2,3,5-トリメチルピラジン生成における納豆菌の関わり
筒浦 さとみ鈴木 志保山本 歩未野田 響子村田 容常
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2022 年 73 巻 1 号 p. 39-49

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抄録

 加熱香気成分として知られるピラジン類は納豆中に存在し, その生成には納豆菌が関わっていると思われるが, 生成機構は不明である. ここでは納豆の主要なピラジン類である2,5-ジメチルピラジン (2,5-DMP) 及びトリメチルピラジン (T3MP) について, その生成に納豆菌が関与することを示した. まず加熱殺菌した市販納豆に新たに納豆を接種後37℃で培養したところ, 2,5-DMP及びT3MP量は有意に増加した. 次に蒸煮大豆に4種の納豆菌をそれぞれ接種し培養したところ, 市販納豆と同程度のピラジン類が生成された. ピラジン類は24~48時間培養後に検出され始め, 72時間後もその量は増加する傾向にあり, 菌の増殖が定常期に達した後に生成された. 次に最少培地にペプトン, イーストエキスのようなエキス類, ビタミン類, 糖及びジカルボニル類 (メイラード反応の中間生成物), アミノ酸など様々な成分を添加し, 納豆菌によるピラジン類生成に影響を与える要因について検討した. その結果, スレオニン添加でのみ両ピラジンが顕著に検出され, それ以外ではほとんど検出されなかった. また, きな粉や分離大豆タンパク質を添加した培地でもピラジン類が生成した. 納豆における2,5-DMP及びT3MPの生成は二次代謝産物的であり, 枯草菌と同様にスレオニンを代謝することでピラジン類が生成されることが示唆された.

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© 2022 一般社団法人 日本家政学会
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