日本家政学会誌
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キヌア粉の一部を澱粉置換したパンの製パン性
石井 和美小林 三智子
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2022 年 73 巻 2 号 p. 79-88

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抄録

 本研究では, キヌア粉の一部を澱粉で置換して製パンし, 澱粉が生地の特性と製パン性に与える影響を検討した. これまでの研究では, キヌア粉に増粘多糖類を添加しただけではパンは膨化しなかった. 製パンの過程で, 澱粉はパンの骨格を維持する役割をするといわれている. キヌア粉は米粉等と比較して澱粉含量が少ないために良く膨化しないのではないかと考えられた. そこで, コーンスターチとさつまいも澱粉で段階的に置換して製パンしたところ, 比容積はそれぞれ30%置換すると増加傾向を示した. さつまいも澱粉で30%置換するとクラムは有意に軟らかくなった (p<0.05). 生地の動的粘弾性を検討したところ, キヌア粉にMCE-4000を添加して生地を調製すると生地調製直後のかたさ (G'0) はキヌア粉のみで調製した生地の5倍程度に増加した (p<0.05). しかし, 澱粉で30%置換するとG'0の値は500~600 Pa程度に減少した (p<0.05). キヌア粉でパンを調製する場合, G'0を500~600 Pa程度に調製し, ゲル化開始温度がキヌア粉の糊化開始温度より低いものを使用すると, パンの骨格が先に構成され, パンがうまく膨化すると考えられた.

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© 2022 一般社団法人 日本家政学会
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