日本家政学会誌
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フード・シティズンシップの概念の明確化
―シティズンシップ教育の理論的枠組みに基づいて―
小野瀬 裕子井元 りえ
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2025 年 76 巻 3 号 p. 101-112

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抄録

 本研究は, フード・シティズンシップの先行研究の定義と概念を, 人権の観点によるシティズンシップ教育の理論的枠組みで整理し, フード・シティズンシップの概念と教育理論を明確にすることを目的とした.

 フード・シティズンシップの先行研究の概念の要素を人権の観点から整理した結果, フード・シティズンシップの定義は, 「フード・シティズンシップとは, 安全で栄養学的に適切な食品の選択により, 自然と共生して生命・健康と自由を確保し, また, 他者・コミュニティ・社会と連帯して平等と公正を確保できることを理解して行動することで, 生産から消費に至る持続可能なフードシステムを形成する個人の権利と責任である. 」と示すことが妥当であると考えられた. フード・シティズンシップの実践は, 国や世界の文化, 教育, 社会, 経済, 政治を形成して, 持続可能な環境を創造することに貢献する.

 フード・シティズンシップの概念と教育理論に基づくESDとしての食育は, 生産・加工・流通・消費 (調理・食事) ・廃棄の食生活の一連の流れで, 人権の観点から自らの権利と責任・義務を思考して実践する学習となる. これは, 実感を持って取り組める人権教育であり, 民主的で, 社会的・経済的に公正で, 環境的に持続可能な社会を創る力を育成する教育になると考えられた.

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