2025 年 76 巻 8 号 p. 420-431
コロナ禍 (2020~2023年度) において, 保育施設が社会経済活動を維持するために必要不可欠であることが認識された. 非常時でも安全・安心に保育が継続できるよう, ①コロナ禍という非常時の保育施設の負担や葛藤を把握し整理する②非常時への備えについての示唆を得るの二点を目的に研究を実施した. 2023年10月~11月に成育REDCapシステムによる保育施設 (幼稚園を除く) の施設長もしくは管理者 (1施設につき1名) を対象としたオンラインアンケート調査を実施した. 調査内容は, 属性, 職員や保護者のコロナ禍前とコロナ禍の状況比較, コロナ禍の保育施設の葛藤などについて選択肢による回答, 国や自治体のコロナ対策の良かった点・改善すべき点, 平時からどのような備えが必要かについて自由記述で回答を得た. 量的データは単純集計を行い, 質的データは, NVivo14で頻出単語を抽出し, 関連する自由記述を抜粋した. その結果, 保育業務に加えて感染症対策などの業務が増加し, 保育施設は葛藤を抱えながら保育を継続していた. また, 職員は精神的健康が保ちにくい状況にあった可能性が高く, メンタルヘルス支援の必要性などが示唆された. 非常時への備えとしては, 配置基準の見直しや待遇改善で職員を増やすこと, 医療知識のある園医や保育施設看護職の活用, 衛生用品の備蓄, マニュアルやICTの整備などが示唆された.