2025 年 76 巻 9 号 p. 474-487
高齢者学習での有効性が示されている, 授業の枠組み並びに高校家庭科高齢者学習の教材「シルバーリハビリ体操」を教材の一つとして用い, 介護予防をテーマとして, 高齢期思考と高齢者支援の両視点を得ながら高齢者について理解することを目標とした中学校家庭科高齢者学習の授業実践と検討を目的とした.
授業はJ大学F中学校の3年生3クラス93名を対象に, 各クラス50分×2回で, 2022年12月~2023年2月に行った. 題材名は「自分の現在から高齢者と高齢社会を考える」であり, 1時間目は主として高齢期思考, 2時間目は主として高齢者支援の視点を得ることにより, 高齢者や高齢社会について理解することを目標とした.
授業の検討は1, 2時間目に, 生徒に記述を求めた項目に対するKH Coder (Version3.0.0.0) を用いたテキスト分析にて行った. 対象となるテキストに対して, 表記のゆれを修正した後に形態素解析を行い, 抽出された単語群を用いた. 各項目の記述の頻出語の確認の後, 共起ネットワーク分析を行い, 各語が記述の中でどのように使われていたのかをみた.
結果, シルバーリハビリ体操の実技を通して得た実感が, 高齢期思考を得ることにつながっていた. また, 自分の身体による理解と, 地域における介護予防に関する情報収集をもとに, 介護予防活動計画をつくる際には, 高齢期思考と高齢者支援の視点が生徒の中で統合され, 高齢者, 高齢社会を理解することにつながっていたと解釈された.