日本家政学会誌
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高リン摂取が成熟雄ラットの骨密度へ及ぼす影響について
山田 麻子野田 聖子奥 裕乃石井 志穂中岡 加奈絵五関 (曽根) 正江
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キーワード: , ラット, リン摂取
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2025 年 76 巻 9 号 p. 467-473

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抄録

 リン (P) は生体内で体重の約1%を占め, 骨や歯の硬組織などに主に存在し, 骨の石灰化などに欠かせない物質である. しかしながら, 近年の日本人の食生活では, 加工食品の利用が増えており, Pの欠乏や不足よりもPの過剰摂取が問題となっている. 我々は以前に, 7週齢の若齢雄ラットを用いてP摂取量の違いによる短期間の骨代謝への影響について検討した. そこで, 今回は特に高P食 (1.0%のP含有率) に着目して, より長期間の実験食投与とし, さらに週齢による違いについても比較するため, 成熟ラットを用いて, 骨評価パラメータへ及ぼす影響について比較することを目的とした.

 すなわち, 11週齢SD系雄ラットを用いて, 基準食 (Cont.) (P含有率0.3%) 群と高P食 (HP) (P含有率1.0%) 群の2群に分け, 28日間飼育した. その結果, 実験食開始28日後の最終体重および実験食摂取中の体重増加量, そして飼料摂取量について, 2群間に有意差は認められなかった. また, 血清カルシウム濃度と血清P濃度についても, 2群間に有意差は認められなかった. 大腿骨において, 骨長や骨幅, 骨厚, 乾燥重量では2群間で有意な差は認められなかったが, 大腿骨の全骨 (皮質骨と海綿骨) の骨密度でHP群がCont. 群に比べて有意に低値を示した. 高P食をより長期間摂取することにより, 成熟雄ラットの大腿骨の骨密度が低値を示すことが明らかとなり, 骨折のリスクを高めていることが示唆された.

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