吸湿発熱繊維は, その高い吸湿性によって効率良く凝縮熱が生じる. しかし, 低湿度環境に移ると繊維に付着した水分の蒸発に伴う気化熱の発生によって, 皮膚温が低下する「汗冷え」現象が生じやすいという課題がある. そこで, 潜熱蓄熱性を有する高分子を用いた蓄熱繊維の不織布を用い, 吸湿発熱不織布との積層による「汗冷え」抑制効果について検討した. 比較として, 蓄熱性を持たない保温性不織布についても併せて実験を行った.
恒温器内で湿度環境を変化させ, 不織布表面に接したセンサーによって温湿度応答を調べた. その結果, 吸湿発熱不織布に保温性不織布 (80℃プレス) を積層した場合には, 低湿度環境になると環境温度である20℃を下回って温度低下し, 回復するまでに39.6分間の時間を要することがわかった. 一方, 吸湿発熱不織布に蓄熱性不織布を積層した場合には, 低湿度環境になっても温度低下が抑えられ, 環境温度よりも温度低下することはなかった. これらのことから, 吸湿発熱衣服の上に蓄熱性繊維で作られた衣服を重ね着することは, 衣服内の温度が安定化し汗冷えの抑制に有効であることがわかった. これらのことは, 蓄熱性不織布が吸湿発熱によって生じた熱を蓄熱し, 温度の平準化を高めたためと考えられた.