抄録
以上佐賀地方で最もよく用いられる煮干5種類を選び実験した結果、次のようになった。
(1) 煮干中の溶出カルシウムと燐とのモル比は水温29℃1時間、水溶出の場合1:10.0であり、5分間煮沸の場合は1:12.3、10分間煮沸の場合1:12.3であった。
(2) 溶出カルシウムの全カルシウムに対する溶出率は、水温29℃ 1時間水溶出の場合3~12%であり、5分間煮沸の場合は4~13%であった。
(3) 煮干の全灰分は、平均12.8%、全カルシウム含量1057.1mg、水分含量15.2%であった。
(4) 溶出量と旨味については、溶出量が増せば旨味も増すとは云えず、そこに或程度の限界があることがわかった。即ち10分間煮沸が適当である。
(5) 本実験に於ては、比較的カルシウム含量が多いといわれている煮干について、その有効摂取量の確認をみたのであるが、その量的意義は、現カルシウム所要量などの諸問題に比べれば小さく、積極的な栄養改善対策とは考えられないが、使用頻度上からも、これから先、積極的にカルシウム有効率を高めるための調理方法に於ける一つの示唆を与えるものと思う。