抄録
1. タコペーストの起泡性はすぐれていて、短時間の泡立てにより元の液量の5倍以上の体積となる。また泡の水和性も高く、室温で3時間放置後にも放水量は零か多くて4%前後であった。
2. タコの泡に及ぼす添加物の影響は、イカの泡の挙動と同じような傾向を示しているが、食塩とpHの影響は特異の動きをみせている。これはタコとイカの蛋白質組成の相違に基づき、さらに添加物の作用とからんでみられる現象ではないかと推測される。
3. むしパンの膨化力の比較から、タコの泡はパンを膨化する十分の力のないことを示した。これはタコの泡の表面膜のしなやかさ (flexibility) の欠如というタコペーストの泡の本質的な短所によるものなのか、あるいは泡の表面膜に付着してくる他の固形分、または他の物質によるものなのか、今後実験によって追求しなければならない点であろうと思われた。
4. このような性質を示すタコペーストの泡をどのように利用していくかは、今後さらに泡の性質を解明していくことにより、また泡を補強することが能可になれば食品加工への用途も開かれてくると考えられるので、重ねて検討していきたいと思う。