家政学雑誌
Online ISSN : 1884-7870
Print ISSN : 0449-9069
ISSN-L : 0449-9069
大豆種皮の栄養価
阪村 倭貴子
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 25 巻 3 号 p. 211-215

詳細
抄録

約85.6%の炭水化物 (主としてガラクトマンナン, 酸性多糖類, キシラン, セルロース) を含有する大豆種皮の化学的性質および栄養価について検討した.
1) 3%硫酸分解により, 生種皮 (水分7.8%) から最高約23.1%の還元糖が生成される.したがって種皮炭水化物の最高約29.3%が糖化されたと考えられる.1%炭酸水素ナトリウム溶液での溶出により, 種皮重量の約26%が減少するが, 種皮の糖化はほとんど認められない.
2) 7種類の市販酵素剤中, Asp.nigar産生セルロシン, ペナーゼおよびT.viride産生メイセラーゼ, セベラーゼは種皮を分解する酵素活性を有し, その活性度はセルロシンが最大であり, 以下この記載順位にしたがって減ずる.セルロシンによる種皮の糖化率は, 39℃において24 (48) 時間反応後では, 約45 (48) %であり, 種皮炭水化物の約57 (60) %が糖化されたと考えられる.ジアスターゼ, パンクレアチン, ペプシンによる種皮の分解は, 48時間後においてもほとんど認められない.
3) 胃酸に相当するpH値の塩酸では, 種皮はほとんど糖化されない.
4) シロネズミの小腸粘膜磨砕物の冷浸出液では, 種皮およびそのアルカリ (1%炭酸水素ナトリウム溶液) 抽出物はほとんど糖化されない.したがって種皮を分解する酵素活性は, シロネズミの小腸内ではほとんど欠如しているか非常に弱いと考えられる.
5) シロネズミの盲腸内細菌により, 種皮のアルカリ (1%炭酸水素ナトリウム溶液) 抽出物の炭水化物成分は著しく分解され, その分解率は37℃で24 (48) 時間培養後, 92 (97) %に達する.したがって種皮は腸管内細菌によってある程度は分解され, 利用されるものと考えられる.

著者関連情報
© 社団法人日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top