抄録
低温発酵法でパンを作るさい, 糖を増量することにより糖が十分でも膨化が低下する区分があるのでその原因を追求するために, 発酵に及ぼすエタノールの影響を検討し, 次のような結果を得た.
1) イースト自体の活性度は低温発酵中低下しなかった.
2) 二次発酵でのドウの膨化不良は, 残糖量不足およびエタノールの蓄積による影響が大きい.
3) 一次発酵後のドウ中エタノール蓄積量は2.1%以上になると二次発酵に悪影響を及ぼすが, このことはエタノール添加ドウのモデル実験によっても確かめられた.
4) ドウの発酵性を左右するのはドウ中の糖やエタノール濃度であるが, ドウの焙焼時には, ドウのガス保持力も製パン性を決める大きな要因になっていると思われる.