市販ブロイラーのももを水煮する場合の加熱速度のちがいによる影響を, 急速加熱と緩慢加熱で肉の内部温度80℃まで加熱した場合について検討し, 先に著者らの行った水から一定時間 (70分間) 加熱した場合とあわせ考察した.
1) 80℃までの加熱では緩慢加熱のほうが成分の煮汁への移行が大であった。70分間加熱した場合は急速加熱のほうが肉はかたく, 収縮が大きく, 成分の煮汁への移行が大きかった.
2) 5'-AMP量は両加熱法に差がなかったが, 5'-IMP量は生にくらべ加熱により減少し, ことに緩慢加熱に肉, 煮汁とも減少が著しかった.
3) 組織の観察によれば加熱により筋繊維は収縮し, 結合組織の膜がはがれることが見られた.
4) 緩慢加熱は肉, 煮汁とも5'-IMP量が少なく, パネルに肉が好まれないことから, 本実験条件では温度上昇が緩慢であることの有利な点はみられず, 急速のほうが好ましいという結果となった.